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ヤクザと家族 The Familyのmuraのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.3
往年のヤクザ映画を想起させるオープニングは確信的な演出か。後半の様変わりが驚きでしかない。斬新なヤクザ映画。面白い。

いわゆるヤンキーのケンジ。父は覚醒剤に溺れて死んでいき、ひそかに覚醒剤を売りさばくヤクザを憎む。あるときなじみの店で、柴咲組の組長を暴漢から救う。この組長は義理と人情を重んじる、昔かたぎのヤクザ。しだいに魅了されたケンジは、組長と親子の盃をかわす。家族となった組長のため、組のため、ケンジは命を張る…

冒頭の展開から、ヤクザによる暴力の連鎖を描いていくのかと思った。そう、『孤狼の血』のように。ところが後半は一転、ヤクザの衰退、また悲哀を描くことが中心となる。そう、『ヤクザと憲法』のような。

ヤクザであろうがカタギであろうが、家族を思う気持ちは同じ。でもヤクザは、血のつながらない「家族」を大事に思う。血のつながる家族に恵まれなかったがゆえに…ということか。

ヤクザ映画ではあるが、「居場所」を求めてさまよう男たちの悲しい物語。

綾野剛が重用される理由がわかる。田舎の金髪ヤンキーはもちろんだが、カタギとなり、悲壮感ただよう壮年の男を違和感なく演じているところを見ると。
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