円柱野郎

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

認知症になり、亡き夫の幻覚と会話をする老サッチャー。
メリル・ストリープはその老人と首相時代のオーラを見事に演じ分けているし、そのなりきる姿はさすがの一言に尽きる。
展開が老サッチャーの回想方式なので、場面の時間が行ったり来たりするのだけど、そこはこの手の映画としてはもう一つ平凡で、何かもっと強烈なリンクがあれば良かった気もするが。
とは言え、時代々々で男性社会であった政治の世界で闘い、政治家としての信念に生きた姿には実政策の是非はともかくとして共感したなあ。

原題は"THE IRON LADY"で、まさに代名詞の「鉄」のごとき揺るがぬ意志のサッチャー。
英国病を強権的に治療し、フォークランド紛争では断固たる態度で軍事力を行使する。
故に賛否の幅が大きい人物でもあるのだろうが、偉大なる英国を信じて公人として人生をささげるということは並大抵のことではあるまい。
引退し認知症になった老サッチャーの姿を見ると、彼女が公人として成し遂げたことと私人としての晩年のギャップは少し物悲しい。
夫にプロポーズされた時、「私は家でティーカップを洗うような生き方はしないわ」と言ったサッチャーだが、ラストシーンでそれを洗う彼女の姿が、ここ至ってようやく私人になれたということなのだろうから。
円柱野郎

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