tanayuki

アナザーラウンドのtanayukiのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.7
アル中おじさんたちの「あと一杯」の言い訳を見せられると思うとげんなりするが、トマス・ヴィンターベア監督とマッツ・ミケルセンがタッグを組むのは「偽りなき者」以来と聞くと、がぜん興味がわいてくる。

お酒を呑んでいい気分になってるのは本人だけで、はたから見たら、迷惑&酒臭い&やたらうるさい&みっともない&情けないし、酔っ払って絡むな&愚痴るな&くだ巻くな&泣くな&踊るな&騒ぐな&フラフラ歩くな&川や海にダイブするな、と煙たがられるだけの存在だということを、あらためて確認させられる。そういう冷めた見方がイヤなら、自分も一緒に酔っ払うしかないというのもアルコールの魔の手の一つ。

個人で楽しんでいるうちはいいんだろうが、深淵は驚くほどすぐそばにぽっかり大きな口を開けて待っていて、その境界線が血中アルコール濃度0.05%ということなのかもしれない。しかし、酒でたぶん職を失い、人間関係を壊し、死者まで出したのに、最後はまた酒飲んで暴れて人生讃歌といわれても、ホントかなあと思ってしまう。それくらい弱くてだらしないのが人間といわれたら、そのとおりなんだけど。

この作品を捧げられたイーダは監督の娘で、マッツの娘役で出演予定だったそうだが、撮影開始4日目に自動車事故で亡くなり、それは叶わなかったという。お酒がもたらす多幸感は長くは続かない。その事故が飲酒運転によるものじゃなかったことを願わずにはいられない。

△2021/09/18 ヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞。スコア3.7
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