鋼鉄隊長

風速七十五米(メートル)の鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

風速七十五米(メートル)(1963年製作の映画)
3.5
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
「台風記者」田村は、銀座に林立するネオン広告塔に危機感を抱く。しかし彼の旧友である木谷は、東洋一の巨大ネオン建設に関わることとなる。そんな中、観測史上最大の超弩級台風が東京に迫っていた…。

 「台風襲来」の言葉を聞いて密かにワクワクする人は、今も昔もいることだろう。かく言う僕がそうである。そんなボンクラたちの夢が詰まった映画が、『風速七十五米』だ。監督は『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966)を手掛けた田中重雄。特撮担当の築地米三郎は、後に『大群獣ネズラ』(未制作)にも関わった。まさに大映特撮の一大企画。夢の国産ディザスター映画である。
 ネオン輝く東京を襲う台風12号は、伊勢湾台風を凌ぐ超大型。発生場所は太平洋トラック島(現チューク諸島)近海。これが非常に興味深い。トラック島と言えば、かつて帝国海軍の一大拠点が建設された場所。一方日本では旅館の女中(町田博子)が「トラックなんて島があるんですねぇ」と呑気に語る。彼女は戦争を忘れたようだ。そんな日本で台風12号は(意図的で無いにせよ)都市部の光を破壊しつくした。この光景に見覚えはないだろうか? そう、『ゴジラ』(1954)だ。戦争を忘れて栄えた東京を、戦没者の無念を背負ったゴジラが再び火の海に沈める。この構図を大映は、台風に変えて撮ったのだ。つまりこれは怪獣映画だ。
 吹き飛ばされる巨大ネオン看板。高潮に飲まれる勝鬨橋。銀座、有楽町も流された。残念ながらカットされたが、「強風でへし折られるテレビ塔」なんてシーンもあったそうだ。空想科学は夢物語。オキシジェンデストロイヤー無き世界では、夢も希望もメチャメチャに破壊されるのみ。人類が未だ遭遇しない怪獣とは異なり、いつ現れてもおかしくない超大型台風だからこそ、破壊描写には背筋の凍る思いがする。
 ただ嘘は言いたくないので正直に書こう。大迫力の台風襲来シーン、終盤約8分ほどしかない。ディザスター狙いで観ると痛い目に遭う。1時間以上ずーーっとネオンを建てるだ建てないだの争いが続く。でも良いんだ。台風のことになると熱くなる宇津井健の熱血記者っぷり好きだし!田宮二郎めちゃカッコよかったし! 何より短いながらも特撮の完成度は凄く高かった!! ただ、ただなぁ…もうちょい特撮観たかったなぁ
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