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人数の町のyumeayuのレビュー・感想・評価

人数の町(2020年製作の映画)
3.5
『ようこそ!デュード』

まるで『世にも奇妙な物語』のエピソードにありそうな不気味な世界観。

借金取りに追われていた主人公・蒼山は謎の男に助けられる。その男に連れられて辿り着いたのは謎の「町」。
そこには多くの住人が住んでおり、多少の労働はあるものの、ルールさえ守れば衣食住に困ることはないし、互いの同意が得られれば自由にSEXも可能である。
余計なことを考えず、言われたことを淡々とこなせばある程度の自由は保障される。人生に行き詰まった人や社会のはぐれものにとっては、まるでユートピアのような町だ。

いったい誰が何のためにこの町を作り、管理しているのだろうか??
その目的は作中で明確に語られることはないものの、住人達が課せられる労働から垣間見ることができる。

どこからか手に入れた投票用紙を手に集団で選挙に行き、言われるがままに投票する…。
SNSを駆使して特定の相手を中傷・炎上または必要に褒めちぎる…。

一般社会では人間扱いされていなかった住人達だったが、ここでは個人としての存在価値を与えられる。
"1"という数字がどうしても必要な人間にとっては、彼らのようにどんな無価値な人間であろうとも貴重な存在なのだと気付かされる。

物語のプロットが面白く、低予算のチープさがいい意味で独特の雰囲気を醸し出している。
ここまでではないにせよ、世の中には本当にこういうことをする人、させられている人はいるんじゃないかと思わせる不気味さがあった。

後半の逃走劇からやや失速した感じはあったものの、個人的にはなかなか面白いディストピア映画だった。
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