死にたくなければ、謎を解け。

ダニー・キャノン監督、ジェニファー・ラブ・ヒューイット主演によるスリラーで、ジム・ギレスピー監督による1997年公開『ラストサマー』の続編。
前作の事件から一年後、友人とバハマに旅行に行った主人公が、再度殺人鬼に襲われる姿を描く。
前作は鑑賞済み。
前作から引き続き、主人公ジュリーをヒューイットが演じているほか、フレディ・プリンゼ・Jr、ミューズ・ワトソンが同じ役柄で出演。
また、ジュリーとともに旅行に行くメンバーとしてブランディ、メキ・ファイファー、マシュー・セトルが登場。
物語は、前作から一年後、ラジオのクイズでバハマ旅行が当たり、訪れたリゾートホテルで、「I still know what you did last summer」（去年の夏、お前が何をしたかまだ知ってるぞ）のメッセージとともに、再び謎のかぎツメ男に追われる姿が描かれるが、舞台が船で訪れる島となっているため、前作と比較するとスケール感は小さくなっている反面、どこにも逃げられないという閉塞感はアップ。
全体的なテイストは、これも前作同様、青春ホラーの路線を継続しているため、ジャンル映画としては悪くない。
ただ、前作からパワーアップしているかと言うと、そうでもなく、主人公ジュリーを演じたヒューイットの魅力で何とか最後まで飽きずにいられたかなというのが正直なところ。
そんな中でも、何気にジャック・ブラックが登場していたのは、見どころの一つ。
前作の高評価を受けて、続編を作ってみたものの、パワーダウンしてしまっているのは否めず、次作がビデオスルーとなってしまったのも納得の一作。

好きなラジオ局は？

むかーしに見た。
1に引き続き怖かったイメージは覚えてる。
スクリーム、ラストサマーはドキドキ感の怖さがあって小学生とか中学生の時に何度か見た。

90年代“ポスト『スクリーム』”期に量産されたティーン・スラッシャーの中でも、本作は良くも悪くも教科書的な一本だと感じました。前作の「港町の日常にフック男が入り込む」生々しさから一転し、舞台はバハマの孤島リゾートへと移されます。スケールアップの顔をしつつ、実態としては「閉鎖空間」と「嵐」によって状況を強引に固め、殺しの見せ場を転がしていくタイプの作品です。

怖さの質は、前作の「生活圏が侵食される嫌さ」よりも、「逃げ場が消えていく焦り」に比重が置かれています。ホテルという箱、ハリケーンという蓋、外界と切断される通信。空間が狭まるほど疑心暗鬼が濃くなる構造は、スラッシャーとしてはかなり真っ当で、テンポ良く“追い詰め”を見せてくれます。

一方で、物語の強引さやツッコミどころが増えているのも事実です。緊張感が持続するというより、「はいはい、次の見せ場ね」と割り切って楽しむ鑑賞モードへと自然に誘導されていく感覚があります。前作が持っていた湿度や現実味を期待すると、やや別物に映るかもしれません。逆に、B級スラッシャーの“作法”そのものを味わいに行くと、ちゃんと“それ”が出てくる作品になっているとも言えます。



※以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。





























本作は、舞台をバハマの孤島リゾートへ移し、ハリケーンによって外界を遮断することで「逃げ場のない箱」を作り出しています。その発想自体は、スラッシャー続編として分かりやすいスケールアップですが、前作が持っていた「日常生活の延長線上に都市伝説が侵入してくる怖さ」とは方向性が異なり、恐怖の質はやや薄まった印象も否めません。結果として、フック男であるベン・ウィリスは、現実的な怨念を背負った人間というより、どこにでも現れて決して死なない“概念”に近い存在へと変質していきます。様式としてはスラッシャー映画らしい一方で、前作のリアリティを引き継いでいるかと言われると、違和感のほうが先に立ってしまう場面も多い作品です。

その中で、本作がサスペンスとして最も機能しているのが、物語の発端となるラジオ・クイズの仕掛けです。「ブラジルの首都は？」という問いに対し、“リオ”が正解として扱われる時点で、地理的知識を持つ人には、この旅行が罠であることが早い段階で示唆されます。後に「首都はブラジリアだ」と明かされることで、楽しかったバカンスの記憶が一気に“死への招待状”へと反転する構造は、ベタではありますが効果的です。本作の中で、最も明確に“気づきの恐怖”が成立している瞬間だと言えるでしょう。
ただし、このトリックが成立することで犯人側の支配力が過剰に強調され、以降の展開がご都合主義に傾きやすくなるのも事実です。名場面であると同時に、本作の脚本的な弱点を象徴する装置でもあります。

物語の核心となるのが、ウィルの正体です。ジュリーを支える誠実な友人として描かれていた彼が、実はベン・ウィリスの息子であり共犯者だったという事実は、驚きの焦点を「殺し」ではなく「裏切り」へと移しています。Will Benson＝Ben’s son という名前の言葉遊びは、伏線としてはあまりに露骨ではありますが、シリーズに「暴力の継承」や「復讐の血統」というテーマを持ち込んだ点では重要です。
ベンが都市伝説的な怪物として描かれるのに対し、ウィルはより現代的で、信頼を利用し、演技で同情を誘い、相手の判断を鈍らせるタイプの悪として機能します。フックという凶器そのものよりも、「身近な人間の顔が反転する瞬間」のほうが不快であるという構造が、本作特有の嫌悪感を生み出しています。

一方で、本作における不満点は、単なる欠陥というよりも、この映画が成立する鑑賞モードそのものだとも言えます。日焼けマシンのシーンに代表されるように、物理法則や合理性が大きく崩れる場面が頻出し、純粋に怖がる映画としての完成度は下がります。しかしその分、観る側は自然とツッコミを入れながら鑑賞する立場へと移行していきます。怖さの代わりに、「勢い」や「90年代ホラー特有の雑さ」が快感として立ち上がる点こそが、良くも悪くも本作の魅力だと言えるでしょう。ジャック・ブラックの浮いたキャラクターも、作品のトーンを乱しながら、結果的には忘れがたい印象を残しています。

ラストの演出もまた、現実なのか悪夢なのかを明確にしないまま物語を終わらせますが、この曖昧さ自体が「恐怖は終わらない」というテーマを補強しています。殺人鬼を倒し、物理的な安全を手に入れたとしても、精神的な安全は回復しません。ベッドの下や暗闇の向こう側に、まだ“何かがいる”と感じ続ける呪いが、ジュリーの中に残り続けるのです。

総じて本作は、完成度の高さで語るには厳しい作品ですが、その粗さゆえに語られ続け、シリーズ全体の影を濃くした一作であることは間違いありません。