JIN

ショック・ドゥ・フューチャーのJINのレビュー・感想・評価

4.6
音楽映画だから劇場で観たかったんだけどタイミングが合わず観れなかった作品。
しかも自分が大好きなエレクトロニック・ミュージックの話。
巨大なアナログシンセサイザーを弄る美女という画をかつて映画の中で観たことがあっただろうか?
舞台は1978年のパリ。
まだ世の中にエレクトロニック・ミュージックがさほど認知されていなかった時代の話である。

電子音楽は自分の音楽のルーツでもある。
実家にあった冨田勲の『展覧会の絵』のレコードをでっかいスピーカーで聴いた時、そのサウンドに衝撃を受けたのが最初。
そこからシンセを使ったありとあらゆる音楽を聴きまくった。
大学に入学するとすぐにシンセサイザーを購入し(デジタルだが)、自分でも音楽を作るようになった。
ちなみに卒業論文は楽器会社がシンセサイザーを作ったイノベーションの歴史について書いた。
なのでシンセサイザー愛はハンパではない。

劇中に出てくる機材は当時でもかなり高額だったはず。
ちょうどRolandのリズムマシン「CR-78」が画期的な機材として登場するのには胸が躍る。
こんな部屋にドカドカと置かれた機材で作られた音楽も、現在ではPCの中で中高生でも簡単に音楽を作ることができる。
いわばDTMの走りはこんな感じで仰々しいものだったのだ。
勿論これらの時代の楽器でしか出せない音もあるし、そもそもアナログシンセサイザーの音は一音一音の音圧がまるで違う。
そして不安定な機材も多く、扱うのに苦労した話は山ほど聞く。

主演のアルマ・ホドロフスキーは元々エレクトロニック・ミュージックには疎かったようだが、本人は音楽もやっていてミュージシャンの友達も多いので、教えてくれる人たちがいたようだ。
今でこそシンセ女子は増えたけど、黎明期は本当に少なかった。
その中で当時果敢に新しい音楽に挑戦したシンセ女子達の名前が最後に挙げられていた。

映画としては電子音楽をやってる女性という設定が珍しいだけで、話の筋自体はどこにでもあるようなものだとは思う。
なので、興味がない人は退屈に感じるかもしれない。
それでも、やっぱりこうゆうニッチなテーマで青春を描いてくれたことが何よりも嬉しい。
これを観てシンセサイザーやエレクトロニック・ミュージックに興味を持ってくれる人が増えてくれればいいなと思う。
なお、煙草の煙は機材にも悪いのでアレはいただけない。

早速サブスクでサントラを聴いてみた。
至福。
JIN

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