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The Recorder Exam(英題)のKOUSAKAのレビュー・感想・評価

The Recorder Exam(英題)(2011年製作の映画)
4.5
あの大傑作『はちどり』の原型といえるキム・ボラ監督の短編。ブルーレイの特典映像で鑑賞。

終始疲れ切っている母親、理不尽な兄の暴力、姉のボーイフレンド連れ込み事件😆など、のちの『はちどり』に継承された設定も非常に多いわけですが、まず何より開始1分くらいで、家族内におけるウニの立場を一瞬で分からせる演出がセンスありすぎで、キム・ボラ監督の才能を強く感じさせます。

ウニ役のファン・ジョンウォンは、ちょっと幸薄い感じが『冬の小鳥』の頃のキム・セロンに似ていて、表情だけで感情を表現する演技は、とても子供とは思えない説得力がありました。

『はちどり』でも、ウニが「私は間違ってないし性格も悪くない!」と感情を爆発させて泣き叫ぶシーンがありましたが、今作におけるウニはまだ幼くて自分の気持ちをうまく言葉にできないのか、家族が寝静まった夜中に、まるで悲痛な叫びのようにリコーダーを吹きまくるシーンがあって、胸が掻きむしられました。

だからこそ次の日、ギリギリのところで母親がウニを受け入れてくれたシーンには、ようやく少し希望を感じましたし、その直後にウニがノートに書いた言葉が健気すぎて涙が出てきました😭

ラストシーンの切れ味も鋭く、子供にとっては一大事なことが、大人にとっては「はい、次」くらいのレベルなんだという、いかんともしがたい「断絶」のようなものを感じさせられました。

たった28分のごく私的で何気ない日常の描写だけで、韓国社会の色々な問題点を照射することが出来るキム・ボラ監督の才能を再確認できる傑作です。
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