未島夏

ノマドランドの未島夏のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
新しい愛の描き方を発明したかのような、人生の円環を映し出した脚本に脱帽。

『いつか』という言葉を観る側も信じたくなるように、主人公の今後を示唆する些細な伏線を敢えて回収せずに残して、今後の円環の巡りを想像させる余白の広さも素晴らしい。



旅の過程で出会う美しい景色の数々を単に感傷に浸る為の情景とするのではなく、様々な仕事をこなす場面の殺風景さと対比させる事で生の実感を描く。

すると相対的に、美しい景色へ死と背中合わせの気配が纏われる。

そういった環境でしか描けない生活の機微によって浮き彫りとなる一瞬を、円環の中で捉え続けるのがこの映画である。

きっと、人生の節目を迎える度に再会したくなる作品だ。
未島夏

未島夏