先日ポレポレ坐でのエクスペリメンタルでポーランドウッチ大学の卒制を10本近く観たのでほんとにそれの延長線上的な一本で肝心なことを仄めかし最後まで濁す演出が巧くカメラも流麗で流石と終始感心、スコリモフスキやオストルンド好きな人ならハマるはず。霧の朝に突然チェルノブイリからやってきた1人の男が塀に囲われた殺風景な集合住宅地の金持ちの住人の生活にマッサージ師として入り込んでいくがクセ強めな住民たちを謎めいた彼の「手」が癒しを施していく。しかし物語が進むにつれ一体彼は誰なのか、全く語られず、細部の台詞や表情で彼に「ファンタジー」と「現実」という役割を与えている。それがモヤモヤっちゃそうなのだがそれさえも凌駕する映画の魅力に溢れているのが本作の凄いところ。可笑しくて寂しくて終わらないでいて欲しい、ラストのマジックショーの長回しが悲哀をよりアクセント、負をハッピーに変える素敵な現代ポーランド映画の傑作。
