山岡

ザ・フラッシュの山岡のネタバレレビュー・内容・結末

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フラッシュが死んだ母を生き返らせようとして過去を改変し、世界がめちゃくちゃになるという、いわゆる「フラッシュポイント」を描いた作品。公開まで紆余曲折あり、初登場の『バットマン vs スーパーマン』から数えて7年、『ジャスティス・リーグ』から数えても6年という非常に長い期間が空いた本作は完全に旬を逃した格好であり、実際、本フランチャイズの他作品同様、批評的にもセールス的にも良い結果を残せていないが、内容的には幸か不幸かDCEUの中でもトップクラスの傑作に仕上がっている。

まず、改めてフラッシュの魅力を端的に分かり易く表現したオープニングが素晴らしい。超速能力をもったフラッシュにしかできない人命救助、おしゃべりでちょっと捻くれた性格の親しみやすいキャラクターで一気に惹きつけられる。さらに一癖あるタイトル演出でこの作品のメタフィクション的な香りをほんのりと感じさせる。

そして、本編はタイムスリップ、マルチバースものの普遍的な面白さを十分に味わうことができる。2人のバリー・アレン、ゾッド将軍の再度の襲来、ブルース・ウェインのキャストがアフレックからキートンに変更、さらにBTTFが好きな人ならクスッとするトリビアルな小ネタなど、タイムスリップもの、マルチバースものとして普通に面白い。似た趣向の『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』は過去キャストの登場をエモーショナルに演出したが、本作についてはエモさは皆無で基本的に一発の笑いを生むために使い捨てている感がある。個人的には本作の使い捨て感はむしろ好ましく感じたが、『ノーウェイ・ホーム』の感動を期待する人にとってはこのような方向性に嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。

それにしてもここまで様々な要素が含まれる作品でありながら、テンポよく、綺麗にまとまっているのは奇跡としか言いようがない。
DCEU末期の敗戦処理のようなタイミングでの公開が非常にもったいない良作。
山岡

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