Naoto

シカゴ7裁判のNaotoのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
3.7
アメリカ陣営とソ連陣営に分断され、代理戦争がベトナムで行われていた時代、世界は混迷を極めた。

そんな情勢にR&Bシンガー、マーヴィンゲイは声を発する。

「What's going on」

多くの人が涙を流し、多くの若者が命を失う。どうなってんだこれは?と。

間髪入れずに返答したのはファンクバンド、スライ&ファミリーストーンのフロントマンであるスライ。

「There's a riot going on」

暴動が起きてんだよ。

そしてその過激なタイトルに反して曲の内容は無音。
起こった暴動には何も意味が無く、生み出すものは何も無いんだというこれ以上ないほどの返答。

本作で描かれる裁判劇はまさしくこれだ。

ベトナム戦争が激化する中で、何が起きてんだ、と立ち上がる民衆。
そして暴動は起こり、扇動を疑われた7人は裁判にかけられる。
その裁判には公平性はなく、権力によって事実をねじ変えるために言論の自由は奪われる。
法廷がボールドウィン(黒人の作家)の書を読むだけで陪審席からも排除されるほどに歪みきり、保守的な様相を呈すれば、生み出すものは何も無い。

「裁判で思想を問われたのは初めてだ」

法廷には思想を操作しようとする力が働く。
そうであれば起こった事実だけを述べる。
事実を述べた上で下った裁判を世界は見ている。

そしてその事実についてマーヴィンはこう歌い上げる。

You see, war is not the answer
For only love can conquer hate

わかるだろ、戦争は答えじゃ無いんだ。
愛だけが憎しみに打ち勝てるんだよ。

その通りだなと思う。
Naoto

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