アメリカ陣営とソ連陣営に分断され、代理戦争がベトナムで行われていた時代、世界は混迷を極めた。
そんな情勢にR&Bシンガー、マーヴィンゲイは声を発する。
「What's going on」
多くの人が涙を流し、多くの若者が命を失う。どうなってんだこれは?と。
間髪入れずに返答したのはファンクバンド、スライ&ファミリーストーンのフロントマンであるスライ。
「There's a riot going on」
暴動が起きてんだよ。
そしてその過激なタイトルに反して曲の内容は無音。
起こった暴動には何も意味が無く、生み出すものは何も無いんだというこれ以上ないほどの返答。
本作で描かれる裁判劇はまさしくこれだ。
ベトナム戦争が激化する中で、何が起きてんだ、と立ち上がる民衆。
そして暴動は起こり、扇動を疑われた7人は裁判にかけられる。
その裁判には公平性はなく、権力によって事実をねじ変えるために言論の自由は奪われる。
法廷がボールドウィン(黒人の作家)の書を読むだけで陪審席からも排除されるほどに歪みきり、保守的な様相を呈すれば、生み出すものは何も無い。
「裁判で思想を問われたのは初めてだ」
法廷には思想を操作しようとする力が働く。
そうであれば起こった事実だけを述べる。
事実を述べた上で下った裁判を世界は見ている。
そしてその事実についてマーヴィンはこう歌い上げる。
You see, war is not the answer
For only love can conquer hate
わかるだろ、戦争は答えじゃ無いんだ。
愛だけが憎しみに打ち勝てるんだよ。
その通りだなと思う。