Melko

スウィート・シングのMelkoのレビュー・感想・評価

スウィート・シング(2020年製作の映画)
3.9
「キレイな声だ。ビリー・ホリデイの生まれは売春宿だよ」
「ファンなの?」
「当然さ。キレイだもん」

大人はみんなバカばかり
大人はみんな分かってくれない

子供は生まれる場所を選べない
ヤングケアラー、親のアルコール依存、子供の非行

人間皆等しく一度きりの人生、その子供時代は短い
食べたいものや欲しい物を我慢し、学校に行かず働く、子供らしくいさせてもらえない子供たち

歌手ビリー・ホリデイにちなんで名付けられた心優しいビリー、その弟でヤンチャなニコ
姉弟の年齢差が自分と弟に重なる
姉弟は慎ましく暮らしてるのに、その親はダメダメで、
嫌なことがあるとすぐ酒に逃げ、子供にあたるは子供の物を壊す父
彼氏の言いなりでこれまた酒を飲んでばかりの母

両親の激しい口論の末、母に愛想を尽かされる父を見る子供2人の眼差しが悲しい

父はアルコール依存の末に入院、母と彼氏の元へ身を寄せる姉弟だが、待っていたのは虫唾が走るような辛い環境
母はアテにならない
窮地を助けてくれた隣家の少年マリクとのサバイバル逃避行
マリクが抱える悲しい過去と傷

疲れてるのかな、ビリーのお父さんが冒頭で「この世界でお前たち2人だけが本物だ。俺の人生で唯一の幸福なんだ」ってとこで泣いちゃったんだよね、、だったらもっとしっかりしろ!この飲んだくれオヤジ!
嫌だって言ってんのに髪の毛切るなんて、、「お揃いで僕も切ったよ」ってニコの気遣いが泣ける。

子供は子供と一緒にいたほうが良いこともあるの
ビリーの心の隙間を埋めるかのように、同じ空間に出てくるビリー・ホリデイ。そうやって憧れの存在を空想し呼び出すことで、ビリーは知らずのうちに心の平穏を保ってるように見えた。
そしてそんなビリーに想いを寄せるマリク。ビリーの切ない表情も印象に残ったけど、本作の個人的MVPはマリク。顔と全体的な雰囲気がジミヘンそっくり。笑
子供の頃から「大切にされてる」ことをあまり感じてこなかったのか、自分と一緒にいてくれる、自分のために何かをしてくれることをすごく大切にする子に見えた。ラスト……でも奇跡はきっと起こるよね…!!
ハッピーエンド信じてますから

不良とか非行とか家出とか、多分やりたくてやってる子なんてあんまり居ないんじゃないか。何かとツッパってたニコの「ワルにはなりたくない」がまさにそれ。
私はたまたまその世界線には居なかったけど、親は家庭内忖度をしない代わりによく喧嘩してたし最終的には別々の道へ行った。
家にいるのが嫌で外で遊んでたらアブナイことに巻き込まれそうになり、今生きてることが奇跡な友達もいる。
子供は親の所有物じゃない。それに長い間悩まされた挙句、親と絶縁した友達もいる。

子供は親の思うように育たないかもしれない。でもせめて、子供が「幸せな子供時代だった」って胸張って言えるように、親には努力してほしいよね。
私もビリーぐらいの年頃はちょうど人生の暗黒時代、何もかも面白くなかった
親ともたくさんぶつかった。でも、「愛してるよ、あなたが大事だよ」ってちゃんと伝えてくれる親だったから、なんだかんだ毎日ちゃんと家に帰ってた
親から愛された記憶ってちゃんと残るよ

白黒の中に時折挟まるカラーの画がコントラスト。ちょっとあざといかな、でも効果的
いつもは白黒のザラっとした日々だから
見るのがちょっと辛い場面が意外とたくさんあって、何度もは見れないけど、なんか色々胸にきた。

この世の子供はみな等しくSWEET THINGなの
Melko

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