たらこパスタ

書かれた顔のたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

書かれた顔(1995年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

非常に面白かったです!!!
記号化 エッセンスを抽出した動き、本物よりも本物らしい体(テイ)の動き、振り付け、属人的な動きの癖、そういうの観るのが大好きなので終始目が離せなかった!

・演劇的な人間と演出された時空間
 歌舞伎の演目、舞台裏、劇中劇、インタビュー、遊芸、ダンス、映画の引用映像、それらが流れるように調和し繋がれる構成でどこか夢心地でした。地の文のない小説のような感じがしました!
照明がさまざまな種類の映像をまとめた全体のルックの統一感を生んでいたように思います。杉村春子さんのインタビューや大野一雄さんの浅瀬でのダンス、歌舞伎座の外で子どもと座っているシーン、などは記録した映像にも思えるけど照明を調節されている印象が入るだけで一気に非日常的さが生まれます。そして時間の流れという点でも非日常的な時間の流れがそこにはあったように思います。坂東玉三郎さんがみせる舞台上での末梢まで行き届いたゆっくりとした動きのたおやかさや力強い舞の加速などは時間の流れが支配されたようでありました。さらに驚きなのは杉村春子さんと坂東玉三郎さんにはインタビューをしているシーンが長めにあるのですがそういった舞台外スクリーン外においてもその場(時間と空間)を非日常的に変容させる魅力があり、作中の言葉を引用すると演劇的な人間、というのはこういうことなのかな〜というのを目撃したような気がします。
演劇的な人間と演出された時空間、この2つの絶妙すぎる調和が幻想的で情緒溢れるモンタージュを形成していると感じました!

・「書かれた顔」
 いくつかパターンが存在していて属性を浮かび上がらせる歌舞伎における書かれた顔。歌舞伎のメイクについて今まで考えたことがなかったけど、この映画を観ていて属性以外をある程度塗りつぶしてできた余白が存在していることでさまざまな物語の設定、非現実、イマジネーションとの融合を個々の鑑賞者がすんなりと行いながら観ることができ舞台上に広がる世界の奥行きを深くしていると思いました。書かれた顔、型のある舞やポーズ、そのような記号化はたとえば演目「鷺娘」の鷺娘を違和感なく魅力的に語ることができる秘訣の一つだと感じた。
また、記号化することで時代耐久性があがるという点も強く思いました。ひとりの人には活動限界があり、諸行無常というか、永遠に変わらないことは無い中、書かれた顔はエッセンスを継承していく媒体でもあるのだなと思いました。
トワイライト 黄昏時 過渡期、その美しさと寂しさ儚さが映像として記録されていることができるのってとても良いなと思いました。
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