はる

スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのはるのレビュー・感想・評価

4.4
スタントウーマンの歴史は映画史や女性の地位向上を考える上で参考になるし、レジェンドの3人の証言は貴重なものだった。特に70年代以降はTVシリーズの隆興とともに活躍の場を広げていったことがうかがえるが、その影もまた常にあったということだ。
彼女達はまさに身体を張って地位向上と正当な評価を獲得していった。その構図は本当にグッとくるし、Julie Ann Johnsonのエピソードなどはあらためて取り上げられるべきものだった。

そしてエヴァンス姉妹登場。デビーは父親の影響でバイクに乗り始めたようでトライアルのショーなどを若い頃からやっていたという。やがてStunt Competitionで総合2位、カーレースでは1位になるほどのライダー&ドライバーになる。作中のインタビューでも語っていたが、78年当時に女性が運転技術でトップに立ったという事実は相当な衝撃を周囲に及ぼしただろう。そうしてスキルを示してからの彼女のキャリアは凄い。TVに映画に引っ張りだこという感じだ。
今作の製作者でもあるミシェル・ロドリゲスと同乗して自宅の近所を爆走するところでは、そのスキルを遺憾なく発揮してスピンまでしてしまう。そこまで攻めるのがカッコ良かった。
妹のドナもスタイルや容姿含めて主演級のダブルを演じることが多かったようだ。

スタントにもさまざまな分野があって、ハリウッドの多くの作品を支えている。近年ではアカデミー賞にスタント部門もあるべきだという議論が聞かれるが実現には至っていない。
ただし、今作を観ればその提案は当然かと思えるけれど、どのようにしてその対象を決めるのかは少し考えても簡単なことではないなとも思う。
それでもこうしてスタントウーマン達の歴史を思うと、World Stunt Awardsといった賞の情報をこれからはチェックして鑑賞に備えたいなと考える。

ちなみに2020年のスタントウーマン部門で受賞したのはMichaela McAllisterで、作品は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。どのシーンかというと、クライマックスで犬に噛まれ、血まみれになって窓ガラスをつきやぶり、プールに落ちて、火炎放射器で火だるまにされるアレ。書いただけでもえげつない。彼女は今作に出演していない。

こういう作品は定期的に製作されていいのではないかと思えるし、こうやってまとめているとまた観たくなってきたなあ。
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