Oto

共謀家族のOtoのレビュー・感想・評価

共謀家族(2019年製作の映画)
3.8
試写にて。娘と妻が強姦の正当防衛で警察局長の息子を殺してしまったことで、趣味の映画で観た知識を武器に完全犯罪を成し遂げようとする夫の物語。インド映画『ビジョン』のリメイクとして、中国で大ヒットしているそう。

いきなり『ショーシャンク』のパロディから始まって、「こんなのはただのモンタージュだ」のような映画トークもセリフに組み込まれている。

中盤で明かされる肝心のトリックは『悪魔は誰だ』(Montage)を元にしたものらしいけど、それ自体に驚きの巧妙な謎が仕組まれているというよりは、小さい子供もいる中でどうやって家族が協力して、捜査の目を掻い潜っていくのかというところが本質だと思った。

息子、局長、町の刑事、わかりやすい悪役がたくさん用意されていて見やすいし、序盤から息子が手のつけようがないくらいの犯罪を起こしていくので話が早いけれど、肝心の捜査は「勘」を頼りに行われていたり、汚職があまりに進行しすぎていて、ちょっと粗いなと思ってしまった部分もある。

でも回線業者を生かした場所のトリックやヤギの回収、証人として周りの知人や旅行先の人々を巻き込んで行く展開はスリリングで面白かったし、ダークトーンの映像に新井浩文を連想させるいぶし銀の俳優の名演が重なって、誰しもが楽しめるエンタメになっていたと思う。

結末に関しては、正当防衛といえど私刑を肯定するには行かないだろうから、まぁこれくらいが妥協点かと思うし、冒頭で提示していたタイという舞台を生かしたモチーフも回収しながら、インタビュー映像で余韻を残して終わるといういいバランス感だったと思うけれど、その先まで想定して犯行に及ぶことができたんじゃないかと思ってしまった。

子供を守るために行った行動が結局自分を子供から遠ざけることになるのは、周りを利用したことへの罰なのか。あるいは、加害者一家と同様に、親子のコミュニケーションを今まで取らずに暮らしてきたことへの代償なのか。

ムエタイと犯行のクロスカッティングも、尋問のスムーズなトランジションも、単純に表現として面白いだけでなく、このようなテーマを体現しているような残酷さが感じられてすごくよかった。
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