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The Haunted House(原題)のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

The Haunted House(原題)(1929年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

 似た題材で同時代のアニメーターたちと比較できそうなので、ハウンテッド・ハウスもの比較の場としてレビューする。

「The Haunted House」(1929)ウォルト・ディズニー
「Swing You Sinners!」(1930)デイヴ・フライシャー
「Flip The Frog in Spooks」(1932)アブ・アイワークス

 まずディズニーだが、テーマの着手は早いがアニメとしての面白さは一番微妙である。基本ワンシーンワンシチュエーションであり、シーンの中で一つの出来事というのが決まっている。逆にシーンが変わらないと出来事が起きないので映像が停滞しがちだ。また、無音が多い。映像も音も展開に乏しい。

 次にフライシャー。こちらはビンボーシリーズ。まずビンボーが盗みをしたあとに墓場に迷い、その盗みの罪を咎められるという内容だ(ディズニーの方は、そもそも内容もなかったな)。全ての出来事が予想外かつユーモアに富んでおり、さらに画面内のどれかは絶対に動いている。その動きはジャズのテンポにのってる。そして最終的に背景自体もそのテンポに合わせて動き出す。そしてラストはもう止めどないドラッギーな展開に!いっちゃん面白い、これは脚本とかシチュエーションを凌駕した真に自由なアニメだと思う。

 最後にアブ・アイワークス。シチュエーションはディズニーをなぞっている。しかし、ワンシーンワンシチュエーションながらそのディティールが掘り下げられており、一番解像度が高く感じた。それでいて他より脚本がしっかりと存在しており、物事がしっかり展開する。そして背景の歪んだ空間も、リアル寄りだ。のちのディズニーアニメだけでなく、テレビアニメのストーリーテリングに近い要素が多いのではないだろうか。音楽はノリとしてではなく、BGMとして。質が高いのはアイワークスが一番だろう。

 斯くして見比べると特徴が各々際立つ。一番微妙なディズニーはしかし、のちのファンタジアあたりを見る限り、ジャズとの相性の良い反復の動きが多い初期アニメーションより、スケールの大きいカラーの作品が表現として合うんだと思った。牧歌的で、クラシック音楽のような展開でそれ故ある程度尺も必要で、となるとまだ本領発揮はできていないだけなんだと思った。ジャズに傾倒できなかったことが後に「南部の唄」のような黒人問題を美化した問題作に繋がるとも言えるかもしれない(「Zip-a-Dee-Doo-Dah」はいい曲ではあるがブルースを理解しておらず、黒人音楽を単にホワイトウォッシュしてしまっている感がある)。昨今のディズニーのポリコレ的態度がしばし批判されるのは、今になって急ごしらえした態度がその場凌ぎ的に見えてしまうからだろう(ポリコレ配慮自体は問題ではなく、あまりに手を付けなさすぎたことが問題だったのだ)。
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