街の喧騒に誘われて、うっかりしていると不意に目を閉じてしまいそうだった。
サイゴンで生まれ暮らしたはずなのに、殆ど忘れてしまった母国語、うっすらとしかない暮らした記憶。面影のない思い出の地というのは、寂しいものだなと思う。
ボート難民となったキットに少なからず後ろめたさをもたらしているベトナム戦争。戦後生まれのルイスの人生にも大きな影響を与えていて、ルイスがカナダのバッジを付けていたという話にはちょっと驚いた。そんな恐怖を感じなくちゃいけないのかと。でも、父親がベトナム戦争に従軍していたなら、自身がアメリカ人なら、確かにベトナムで暮らすことはそれなりに覚悟のいることなのかもしれないなとも思った。本当に終戦を迎えても戦争って終わらないんだな···。
極力情報を入れない状態で観に行くから、期待や想像や思い込みや、そういうのとギャップを感じる映画にたまに出会うけれど、この映画はまさにそのひとつで、予告やキャッチコピーや、プロモーションに騙された感は否めなかった。わりと序盤で違和感を覚えてそれを払拭できなかったから、ちょっと映画の世界に入り込めなかった気がして、それが残念だった。
#10_2022