ゲイリーゲイリー

ペンギンが教えてくれたことのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.0
耐え難い不幸が身に降りかかった時、人はそれ以前の自分と比較し、元の自分には戻れないと嘆く。
過去の自分を理想とし、現在の自分を拒絶してしまうのだ。

本作の主人公サムは事故のせいで、下半身不随となってしまう。
その事故がもたらしたのは彼女の身体的障害だけでなく、彼女の生気や明るさ、家族の絆の崩壊だった。

このような、どん底からの再生というストーリーのヒューマンドラマは多く見受けられるが、本作が他の作品と異なるのはサムの再生のきっかけとなるのが、ペンギンと名付けられたカササギフエガラスという鳥だという点だ。

傷ついたペンギンが再び羽ばたけるようになるのを、サムとリンクさせるだけでなく、ペンギンの動物としての愛くるしさや可愛さによって家族の笑顔が増えていくのがとても良かった。
動物が持つ、人を癒す力というものを改めて垣間見た気がする。

また、本作の舞台となったオーストリアの風景(特にアバロンビーチ)がとても美しく、そういった風景を楽しめるのも本作の魅力の一つだろう。

そしてサムの夫であるキャメロンをはじめ、周囲の人々の温かさが非常に心地良い。
(個人的にはガイと"creep"を歌っているシーンが特に好き。)

どんなに辛い状況に陥っても、そこから前向きになれるかどうかは自分自身が決める事だと再認識させられた。
サムがペンギンから前に進む力を貰ったように、本作からそれを貰う人も多いのではないだろうか。