まりぃくりすてぃ

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

3.9
捕虜収容所にて、坂本龍一扮する大尉が、デヴィッドボウイ扮する “俘虜ロレンス” とBLに陥り、戦争そっちのけで牢屋の中でディープキスなどを繰り返す。
目がイッちゃった坂本は「貴様はそれでも皇国の軍人か! 天皇陛下とあの毛唐とどっちが大事なのか!」と軍法会議にかけられ銃殺刑に処される。
しかし、厭戦気分はほかの兵卒らに伝染してゆく。
ロレンスのほうは扱い保留のまま独房で寝起きしていたところ、それまで存在感のなかった北野たけし二等兵が「大尉の遺言だよ〜。メリークリスマス・ミスターロレンス」と突如クリスマスの日にこっそりロレンスを逃がしてやる。
普段から部隊内で馬鹿にされてるニコニコのたけしは、上官たちに吊るしあげられ竹槍で処刑される。
たけしと坂本は、その後、幽霊となってジャングルのいろんなところに出没し、部隊全体が戦意喪失してゆく。
しかし、大東亜戦争全体はそれと関係なく虚しく進んでゆくのであった。
オワリ

という映画なのかと長年勝手に想ってた。

このたび、観てみたら、中身全然違くて、、デヴィッドボウイはロレンスじゃなかった。
坂本龍一は終始むっつりガミガミしてて、たけしも威張れる地位の役でなかなか暴力的。
喜劇性がない。

日本軍の人たち、すぐギャーギャーわめく。すぐわめく邦画の中の日本人ってね、、。。

もうちょっと坂本さんの中のボウイへのときめきをわかりやすく表すべきだったかも。
キス(らしくない頬への美しいチュ・チュ)を受けた後に刀を振り上げる必要なかった(倒れるだけでいい)し、砂場(?)に髪を切りに来たのか首を切りに来たのかわかりづらくて刃物が物騒だった(刃物は最初から携えてるよりも懐から出すほうがいい)。
たけしもだけど、感情表現と言動がカクンカクン。

ほとんどずっと、たけしも上手くなくて雑味をくれたけど、ラストのラストで奇跡的にたけしが主演としてツルツルに輝いた。おめでとなラストだった。
これはハラとロレンスの物語だね。

ボウイも、当たり前だけどキリキリと美しかった。よく頑張りましたが、どうせギャラいっぱいもらったはず🤗

ローマの休日は、スタア映画じゃなかった。一生忘れられないぐらい美しいオードリーヘプバーンとグレゴリーペックに私たちは完全同化した。私たちは美しいヘプバーンになりきった。美しいペックになりきった。ドラマは全鑑賞者の心のお腹に消化されきった。

この戦メリは、スタア映画にとどまってるかもしれない。
美しいボウイを、美しい坂本龍を、美しい目をしたツルツルのたけしを、ロレンス役を、私たちは客体として見つづけた。あくまでも「まあ、美しい。ああ、大変そうね」と眺めるのがメインだ。お腹(ハラワタ)にまでは来ない。
この世には、キャスティングよりももっと大切なことがある。

でも、ラストのたけしには、奇跡が起こってた。ラストのたけしに免じて、キャスティングの華美さをゆるしてあげる。

ところで、日本は東洋の代表じゃない。東西という時の、東とは、インドと中国のこと。日本はどちらかというと悪い意味で特殊。「水に流す」という言葉を異常に好む、健忘症が治らない、形に囚われやすい辺境の島国。
東西という異文化の接触・衝突・相互微理解のドラマ、と思ってあげたい気はするんだけど、「単にその時点での民度の高低があるだけであとは同格の異文化同士の、まあ邂逅だ✨」なんて呑気な自賛はできない私たち。集団で今も狂い続けるのが健忘日本だ。
「一人ひとりに罪はない。戦争のせいで集団発狂してしまったんだ」と劇中の英国人に言ってもらってるけど、どの時代にも、一人ひとりに罪はちゃんとあるし、今が戦後だろうが戦前だろうが私たち日本は集団で狂い続ける。

それとともに、欧米人の詭弁にも私は失笑する。「ジュネーブ条約」「ジュネーブ条約」と鶯のホケキョみたく唱えてたけど、戦争自体は肯定して参加しておいて、まるで戦争をスポーツみたく捉えて戦争の際のルール云々を真人間ぶって口にする汚さ。
戦争する自体がゼッタイの悪なのに。戦争する時点で両方地獄行きの罪人なのに。
親からもらった身体を大切にしない・大切にし合わない時点で、人間失格。捕虜の扱い方のルール云々うるさい。サルに戻れ。

どいつもこいつも、母親に命懸けで産んでもらったくせに。と思います。

第二次世界大戦は、地球上のすべての成人男性が全女性に壊滅的な嫌がらせをした史上最悪最大の犯罪だ。それ以外の何物でもなかったりする。日本も英国も、戦争参加した男全員死刑。と思いたくなります。
こんな簡単な事実を男も女(馬鹿女)も認めないから、いつまで経っても戦争ばかり続くんだ。よ!

大島監督が、この1942年のジャワ島の、あたかも男性しか存在しないかのような空間の隅に、日本軍のための性奴隷(いわゆる従軍慰安婦)がちゃ〜んと用意してあったことをちゃんと描き(☚少なくとも水木しげるさんぐらいの当たり前な戦争憎悪に基づいて)、しかも、ヨノイ、ハラ、拘禁所長、脇役ども、ロレンス、セリアズ、俘虜長…ら一人ひとりの誕生(各母親による分娩・抱き上げ)シーンを総見せつけするエンドロールサービスでもしてくれれば、反権力の筋金入りの芸術家としての大島渚を認めてあげられる。

私たち人類は、絶対に戦争を、やめられない。やめさせることができない。そして、特に日本人は、集団発狂癖をこれからも世界にご披露し続ける。世界はさほど日本に注目してないだろうけど。
「この映画に男性しか出てこなかったことの本当の意味と、不充分さ」とか「ハラとロレンス以外を主役と呼んではいけないのに、このチャラっぽパッケージは何? スタア映画なの?」等々、文句つけて胃薬呑んで寝れば、せめて夢の中でなら平和と真義を培えるかも。
べつに平和と真義のために生きてないけど、理想が高くってね♪