アニマル泉

異邦人 デジタル復元版のアニマル泉のレビュー・感想・評価

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)
4.3
カミュの原作をヴィスコンティが映画化した。暑かったから殺人を犯したという不条理劇をヴィスコンティは感情を断ち切るように早いテンポで、エピソードをドキュメンタリーのようにひたすら淡々と提示する。カメラはズーム、パンと絶えず動いている。アンナ・カリーナがいい。白地に赤いストライプのワンピース、カリーナは海が似合う。原作では「暑さ」と「虚無」がテーマだ。太陽の逆光、汗、影、マストロヤンニの芝居で表現しているがなかなか難しい。なるべく原作通りに手を加えないで演出したとヴィスコンティは語っているが、「暑さ」「虚無」という抽象的なテーマを具体的な映像で表現する手立てが何か必要だったかもしれない。後半は法廷劇になる。そしてクライマックスは独房での神父との対話だ。暗い壁の中で無神論者のムルソー(マルチェロ・マストロヤンニ)に「最後に神が現れる」と神父が説く。拒絶するムルソーのアップに涙が流れる。
アニマル泉

アニマル泉