Melko

ジャスト・キッズのMelkoのレビュー・感想・評価

ジャスト・キッズ(2019年製作の映画)
3.9
大人は、大人のなり方なんて教えてくれない。
チクチク痛い。

母を病気で亡くし、父を自殺で亡くした3兄弟。
長兄ジャック、長女リザ、次男マティス(ティティ)。
学校はドロップアウト、バイトしつつもフラフラしてばかりのどこか浮ついたジャック。19歳。
イライラしてばかり、家族に未練なんてない。墓参りなんて絶対しないと吐き捨てて家を出るリザ。17歳。
いつも何か食べてるぽっちゃり、ホントはワンワン泣きたいのにどこにいても泣けないティティ。10歳。

ある日突然親が死に、兄弟の親代わりをするなんて、荷が重い。頼れる友達がいても、お金持ってる親戚がいても、もう「親」はいない。お互い、自分で生きていくしかない。その準備も経験も十分積む前に取り残される、不安と絶望感。

会えばケンカばかりの兄弟は、結局のところ似ていて、3人とも繊細。
死が頭から離れないジャック。この先どうするか漠然とした不安を抱えるリザ。誰かに側にいてほしいティティ。
思い切り泣こうとしてるティティに「泣くな!」って言ったり、
「泣きたい時はどうすればいいの?」って聞くティティに「顔を作るんだ。仮面をつけるように」ってアドバイスするジャック。でも、それは違うよジャック。
泣きたい時に泣かないと、泣きたい時に泣けなくなるんだよ、ジャック。そうしたら、胸に引っかかった棒がどんどん奥へ刺さっていって、抜けなくなってしまうんだよ。

子どもと大人の境目にいながら、大人のフリをして生きなければならないジャックに、自分の母を重ねた。あの時母は、どうやって乗り越えたのだろう。やっぱり、死にたくなったのかな。消えたくなったのかな。それでもとにかく生きて、どこにも行かないでいてくれたから、今のわたしがいるんだよね。

「お前がいなくなれば清々する」「大嫌い!役立たずの惨めな男!」なんて罵り合うくせに、ホントにいなくなったら心配して血眼になって探すんだもの。大丈夫だよ。3人だけの兄妹弟。親はなくとも絆はしっかりある。ここに。
「俺は大人だ」って虚勢張ってたジャック。「俺はガキだ」って言えるようになってからが、スタート。
ガキがガキの面倒見たって良いんだよ。
「お前を信頼してる」って言ってくれる大人がすぐ近くにいるんだから。

話のテイストがフワフワしてたり、不必要なサスペンス要素ややたら多いジャックと彼女のイチャイチャシーンにうーん…だけど、眩しい笑顔のティティとジャックの言葉の要らない自然体の絆に得点を。
「ティティ〜〜ティーティティ」って酔っ払って呼ぶとこ、アドリブだよね笑
Melko

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