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14歳の栞のRenのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
5.0
久々に映画で号泣した。某中学校2年6組の35人に実名&顔出しで密着したドキュメンタリー。プライバシーの関係で配信やソフト化はしないと公言されているため、劇場でしか観られない特別感も相まって忘れられない映画になった。

中1の1学期とか中3の3学期ではなく、中2の3学期。新入生の緊張感や最上級生としての責任感の無い「あいだ」「途中」の子たち。
大きないじめもトラブルも無いけど、彼らは授業の/部活の/友情の/恋愛のあらゆる些細な動きに敏感に反応していて、その全てが敢えて取り沙汰されることは無くとも人生に大きな影響を与えるドラマであった。そんなあの頃を思い出した。

中学時代、自分の苦手だった/関わらなかったクラスメイトにだって彼らの人生があって、形は違えど一人ひとりがその人生を謳歌し、苦しみ、全うしていたという当然の事実に10年越しに気づいた。自分が当事者ではないからこそ知り得た感覚。
同じ地域に育った同い年の子が集められた教室とは、複雑に矢印が飛び交い絡み合う場所。そんなコミュニティで過ごしてきた義務教育時代の記憶とか温度とか匂いがぶわっと蘇り、戻りたくない、でももう一度あの世界に混ざれたら、などと取りとめもないことを考えてしまう。

14歳の彼らがカメラに向かって語る現状やビジョンは、達観しすぎだったり楽観しすぎだったり、やはりそれぞれのカラーがあって、そのどれもが青くて胸がキューっとなって、でも紛れもなく彼らは自分自身で....。大人になりかけの、定義できない「思春期」そのものが真空パックされている。
性格も考えていることも面白いくらいバラバラな彼らが一堂に会する集合写真。最後まで観ると、このポスターがより一層色付いて見える。

あの頃の自分に「大して話しもしないのに苦手だと決めつけて心の中で見下していたクラスメイト」が居なかったかと言われたら嘘になる。もしあの頃の自分に会えるなら、『14歳の栞』を観た自分として会いたい、そう思った。

事件は何も起こらない、ともすれば卒業式で流すホームビデオのような映画。この子は主人公でこの子はヒールで....というようなキャラ付けも無くただ非線形な過渡期の子どもたちが映るだけの映画。バックボーンも知らない人間の、派手なオープニングも劇的なエンディングも無い中途半端な「途中」の映画。青くて痛くて共感を超えて尊くて愛おしい、素朴ながらキラキラしているものがぎゅっと詰まった、大切な映画。

研究発表準備に忙殺されながら無理やり時間作って観に行ってよかった。これから先も定期的に劇場公開してほしいな。

その他、
○ バレンタインデーにチョコを渡して→ホワイトデーのお返しを選んで買って家まで渡しに行く 一連の出来事に悶え死んだ。若い!甘い!甘い!
○ エンディングのクリープハイプの『栞』で追い討ちをかけるように泣かされた。何度も聞いている曲だけど、こんなにも開けた人生賛歌に聞こえたのは初めてだった。
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