KOUSAKA

茜色に焼かれるのKOUSAKAのネタバレレビュー・内容・結末

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

キネカ大森、尾野真千子&石井裕也監督トークイベント付き鑑賞。

もっと早く見ておけば良かったと思うほど、邦画では2021年ベスト級の素晴らしい作品で、尾野真千子キャリアの中でもベストかと。

河瀨直美監督の劇場用長編デビュー作『萌の朱雀(1997年)』で瑞々しいデビューを果たした尾野真千子に当時衝撃を受けましたし、同じ奈良育ちの自分としては、いつかナマでお目にかかりたいと思ってたので今日は感無量でした😭(彼女の演技論がかなり本質を突いていて、自分は200%同意でした)

純平と同じ高校のいじめっ子たちや、良子のパート先であるホームセンターの上司や店長など、少しカリカチュアしすぎなキャラクター設定が若干ノイズになるところはありましたが、それを補って余りあるストーリー展開と登場人物たちの魅力に持っていかれました。

尾野真千子が演じる良子というキャラクターは、心の奥底の本音が見えづらく、何度も何度も理不尽な状況に直面させられながらも、決して感情を露わにせず、最終的には「まあ、頑張りましょう」と言えてしまう「強さ(であり弱さでもある)」を持っています。

そんな良子を演じる尾野真千子の抑制された演技は逆に凄みを感じましたし、だからこそラストの「映画内一人演劇」におけるカタルシスがあるわけですが、一方、良子が唯一感情を吐露することが出来る貴重な存在であるケイを演じた片山友希の存在感も特筆すべきだと思います🤔

世間の評判とは裏腹に、個人的には全然ハマらなかった2020年公開『君が世界のはじまり』で、唯一といっていいほど心を打つ演技を見せてくれたのが片山友希で、今作で非常に重要なケイという女の子の役で登場したのは嬉しかったですし、彼女の、世の中に迎合しない(できない)「ふてくされ」演技は今作でも本当に絶品で、だからこそケイが時折見せるピュアな笑顔にもギュッと胸を掴まれてしまいました。

あと、永瀬正敏演じる中村の後半のヤクザヒーローぶりにも胸が熱くなりましたし、和田庵くん演じる純平のピュアさにも、ちょっとこそばゆい魅力があって素敵でした。

コロナ禍を反映した物語ではありますが、実のところは資本主義社会の歪んだ本質を突いた普遍性を持っているので、数年後、数十年後に見ても全く色あせない作品だと思います。文句なしの傑作です‼️
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