アー君

アミューズメント・パークのアー君のレビュー・感想・評価

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)
4.2
「ゾンビ」でお馴染みのジョージ・A・ロメロによる珍しい社会派映画である。諸事情でお蔵入りされていたが、偶然フィルムが見つかったらしく、マスタリングによるデジタル補正をおこない上映をした。資料を見るとルーテル教会(ルター派)からの依頼で、老人を大事にする趣旨の宣伝で、商業映画ではなく高齢者を支援する制度を提供する目的で製作されたようだ。

「ゾンビ」における避難場所であったショッピングモールが消費社会の風刺であれば、今回のアミューズメント・パーク(遊園地)は一般的にみられる非日常への逃避ではなく、この施設の限定的な始まりと終わりは人生のようでもあり、これは現代社会の縮図ではなかろうか。

ゴーカードに乗る老夫婦と若者との衝突事故は、現在の高齢運転者による死亡事故を連想させているが、高齢者による免許返納はあまり多くはなく、車が手放せない実情もあるようだ。

数人の暴走族からの老人狩りやリフォーム詐欺のような営業。今村昌平「楢山節考」のような侘(わび)しさはなく、逆にあっけらかんでポップな描き方がホラーのような恐怖はないが妙な不快感だけは残った。

日本でも初期のツービートの漫才で高齢者を小馬鹿にしたり、藤子・F・不二雄の短編「じじぬき」では、老人問題を取り扱った主題は多くあり、楳図かずお「ROJIN」では20才ぐらいしか生きられない世界を背景に、偶然居合わせたシワだらけの老人を異形の存在として扱ったテーマでもある。

この映画では老人を見せ物(フリークショー)にするシーンがあったが、最近のクローネンバーグはインタビューで「老化とは化け物である」と語っていたとはいえ、ブラックジョークだとしても冗談とは言い難い物言いである。

上映時間は50分ぐらいのコンパクトな小作品でロメロ自身はあまり思い入れがないようだが、現在の私たちが抱えている高齢化社会に警鐘を鳴らす問題作であった。

[ブルーレイによる購入・視聴]
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