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ノーカントリーのSHiNのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.2
ノーカントリーと言う映画の存在も、コーエン兄弟も知ってはいたけど、この映画の表紙のハビエル・バルデムのあの主張が強すぎる顔面ね。
あれは内容知らなくても、なんかこの人ヤバいよね?臭が溢れ出てるから正直避けてた。なんとか逃げていたけど、とうとう彼に捕まってしまった(心鷲掴み)。

スカイフォールでのあの存在感のおかげでやっと観ることができたのかも?長回しワンカットでの初登場シーンから彼には若干の想いがあったけど、今回のアントン・シガー役で完全に落ちた。

とりあえずこの映画の魅力をあげるのであればやはり彼の怪演にあるでしょう。殺し屋というか、生身の人間でありながら最早その存在感はターミネーター。
ターミネーターに追われるのと、シガーに追われるのと、どっちが恐いか想像してみよう。

……

……どっちも恐いしやだ!!

絶対生き残れる自信がない。

ターミネーターの最終的に行き着く所は彼だ。見た目が人間なだけであって簡単に人を殺せるし。なにもしてなければ人間社会に潜り込んであっさりと標的を殺せてしまう…
ショットガンで撃たれたってホテルの一室で自分で荒治療しちゃうし。そこもシュワちゃんターミネーターがホテルで傷ついた皮膚を応急処置した場面と完全に一致。

腕から骨が突き出ても全然平気。
通りすがりの子供に、おじさん大丈夫?骨が飛び出してるよ?って心配されても彼はこう答える。

「ちょっと座って休めば治るから大丈夫」


そして愛用する武器がまたクセが強い。圧縮空気ボンベとそこから伸びたホースを各々両手に持ち歩く姿。クセが強い。
あの異様な姿からはいっけん殺意が感じられなくて、まさかそれに撃ち殺されるなんてこれから殺される側もまさか想像していないから、「やぁ。なにか用かい?」みたいなノリで世間話をしてしまう。

人は理解し難い存在や、わからないけど恐怖や危機感を相手に感じる時、とっさに世間話や意味のない言葉で繋いで相手の出方や逃げ道を探す。

でも、
そんな人間の心理も彼には全く通用しない。自分の中のルールや感じたものに正直に素直すぎるので相手の気持ちやユーモアなんて持ってないんだろう。
それが恐い。だって話し合いや金で解決できないから。じゃあどうしたら逃げられるの?

コインが表か裏か当てればいいんだよ。

それしかない。

こんな異常者が自分の住む街にいたらどうだろう。
日本で例えるなら、昔は家の鍵なんかも締めなくても全然平気だった(父談)。
ご近所はみんな顔見知りで危険なんて全然なかった。

今は通り魔、テロ、非社会団体、いろんな悪が蔓延ってる。
昔は鍵はいらなかった。そんな時代じゃなくなったんだね。弱者には生きづらい世の中になってしまった。
そんな嘆きを、トミー・リー・ジョーンズが語る映画。

あと、これほとんど曲が流れないのでほぼ映像の迫力と緊迫感のみで最後まで突っ走ったところがまた凄い。
でも終わりかたー!!
終わりかたが、えっ?ってなったけど、始まり方と終わり方にブレはないからやっぱりあれはあれで良いと思えた。


(↓ちょっとネタバレ)
意外にも、主要人物のトミー・リー・ジョーンズと、ハビエル・バルデムと、ジョシュ・ブローリンの3人が劇中で一度も対面していなかった、ていうのも中々面白かった。ストーリー上では絡みまくっているのに相対せずに物語を作り上げた所はさすがコーエン兄弟、ていうことなのかも。