まちゃん

コーダ あいのうたのまちゃんのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
聾唖の家族の中で唯一の健常者の少女ルビー。家族の通訳係として家業の漁業の手伝いをしながら高校生活を送っている。新学期が始まり合唱クラブを選択したルビー。この選択が彼女の運命を変えていく…。障害者が出て来る作品で陥りがちな罠がある。それは障害というテーマを感動物語の道具として使ってしまう事だ。しかし、この作品は違う。登場人物一人一人が生きている。ヤングケアラーとして家族を支える為に早く大人にならざるを得なかった面。ごく普通の思春期の少女としての家族との関係性。学校で目標に向かって努力する姿。友情、恋愛。主人公・ルビーを例に挙げても様々な顔があり、実在感が素晴らしい。家族も「障害者は天使」というような類型的な描かれ方ではなく多数の欠点もあるごく普通の人間としてしっかり描かれている。だからこそ家族の愛情、一生懸命に生きるルビーの青春の美しさ、その尊さに素直に感動出来るのだ。また感じたのが手話の感情表現の美しさだ。言葉は発しなくとも雄弁な手の演技に心を打たれた。映画の中での使い方も素晴らしい。心の底から良い作品を観たという満足感に浸れた。多くの人に触れて貰いたい作品だった。
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