ひろ

ひまわりのひろのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
3.6
ネオレアリズモの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督によって製作された1970年のイタリア映画

ファシズムの時代にリアリズムを追求したヴィットリオ・デ・シーカ監督による反戦映画の傑作。戦場の生々しい描写で反戦を訴えるタイプの作品とは違い、戦争という時代に翻弄された夫婦の悲哀を描くことで、戦争の愚かさを訴えているのが素晴らしい。

タイトルにもなっているひまわりが一面に咲き乱れるひまわり畑の美しさと、ヒロインの心情との対比は見事としか言いようがない。美しいひまわり畑を見ていると、切なさが増してくる。さらに、「ティファニーで朝食を」などの音楽で知られるヘンリー・マンシーニによる主題曲が、悲哀をより感じさせている。

イタリア映画を代表する俳優マルチェロ・マストロヤンニは渋くてかっこよかったし、同じくイタリアを代表する女優であるソフィア・ローレンの悲哀を表現した演技は見応えがあった。ただ、ソフィア・ローレンの意志の強さが表れた顔つきは、不幸な女性に見えない気がした。セックス・シンボルと言われたスタイルのよさも邪魔している。現在は妖気を放っているけど、この女優は、いい意味でも悪い意味でも存在感がありすぎる。

ソフィア・ローレンをどう感じるかという問題さえクリアしたら、反戦映画としての表現は芸術と言ってもいい傑作なので、絶対観ておくべき作品だろう。似た内容で、よりロマンチックなジャン=ピエール・ジュネ監督の傑作「ロング・エンゲージメント」と比べると面白いかもしれない。
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