まりぃくりすてぃ

ひまわりのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
4.6
最初のひまわり畑でもう酔える。
怒ってわめきまわるソフィア・ローレン、いい。こんなふうに周りを片っ端から叱りつけてカッコよく生きたいものだ。
さほどエロくならないカラッとした軽みが楽しさをくれる序盤。オムレツのところはダラダラ。
泣かせ屋な音楽にはまあ賛成。クローズアップの仕方と回数は、情煽りの意図があろうがなかろうが拙攻な感じがするけど。
画で語る、という真っ当なワークが、特にソ連シークエンスでスゴくなる。アントニオを救うマーシャの笑顔(の大輪咲き!)が、以後の物語(というか全体)への強い説得力になってる。これを撮れたことが本当に大きい。そして、駅、、、、もらい泣き!
といっても、悲しい物語だとは私は思わないな。好き合った男女が別れるって、そんなに悲しいこと? それまでは二人だけの幸せだったものが、別れの乗り越えによって四人の幸せになるんじゃないの?(あのビートルズがデビュー前にデッカのオーディションに落ちたことによって、その後にビートルズとEMIの出会い、ストーンズとデッカの出会い、を生んで、結果として四者が幸せになったんだからね。うん、いい譬えだ。)

イタリアのエキストラは怖いような。ソ連のエキストラは変に微笑ましいかも。彼らは、スター映画へのオブジェになっちゃってる。それはまた、意外に地道な(文学性がはっきり香る)ストーリーから、主演の二人の存在感が浮いちゃってる、ということでもある。「素人の男女を主演させていれば作品の質は上がっただろうけども、この二人の出演作だからこそ、こうして何十年経っても鑑賞されつづけるんだ」というジレンマ内包。しかし、、、後半の、ローレンの憮然とした真一文字のぶ厚い口とメソメソ爛々の目、マストロヤンニの真骨頂にちがいない哀愁漂う罪なき弱さと縋りの表情、などに引き込まれれば、、本作を歴史的名演の記録作と認めざるをえない。サベーリエワ(マーシャ役)の宝石性も含めて。ひまわり映画史上最高のひまわり風景とともに。
ロシア人はひまわりの花を愛してるそうだ。種もよく食べるそうだ。世界中のみんなが幸せになるのがいいけど、私は特に、寒いところにいるロシアの人が幸せになってほしいってしょっちゅう思う。(この映画は、ロシア愛を全世界で高める効果あるね。)


ところで、私は「ソフィア・ローレンに似てる」と男に言われたことがある。
実際は似てないと思う。でも、当時つきあってた男(わりと喧嘩が多かった)が、そんなことを言い始めたのだ。何度鏡を見ても、首をかしげる。似てないものは似てない。いろんな人に訊いてみた。誰一人私をソフィア・ローレンに似てるとは認めず、兄などは「ふざけんな。何でお前がソフィア・ローレンなんだ」と私に怒った。
言い出した恋人に私が問い詰めたが、まともには根拠を教えてくれない。教えてくれないのに私をいつも「おい、ソフィアローレン」とか呼んだ。けっして「ソフィア」とは呼んでくれず、必ず「ソフィアローレン」。何だか物体みたいに聞こえた。
ほんの数カ月間のことだった(彼とはわりと早く別れたから)が、私は半ば悩んだ。もちろん、有名女優に似てるなんて言われて舞い上がってる気持ちも少しはあった。『ひまわり』という映画を初めて観たのはその頃だった。ソフィア・ローレンを調べるためだった。何も掴めなかった。
その男を、冗談ばかり言ってる不良、と決めつけた私は、いろいろやり返すようになり、喧嘩が増えたり、ある時、ラブホで「私をメチャクチャにして」という一遍言ってみたかったベタセリフを言って賢者タイムにベッドから蹴り落とされたりした。(このへんの細かな話はバカみたいなのでもう割愛。)
さて、当時、会社の後輩女子に、可愛いのが一人いた。その子は、オードリー・ヘプバーンに似せてる女だった。『ローマの休日』のヘアカット後のヘプバーンをあからさまに意識した髪型・化粧・ロングスカートで、“爽やかちゃんをやってます” 感が半ばナチュラルに強かった。男性社員に大人気でもあった。ある程度以上は本当にヘプバーンに似てた。
そのヘプバーンに、ある日、隣席から私は私語してみた。
「私、彼氏から『ソフィア・ローレンに似てる』って言われてるんだけど、どう思う? 似てるかな? ちっとも似てないよね?」
彼女は、パッチリした目で二秒半ぐらい私を見つめてから、答えた。
「うん、似てるんじゃないですか?……」

「似てるんじゃないですか?……」と答えてくれたそのヘプバーンとも、男とも、その後私は縁が切れた。あれ以後、私の人生の中で、私をローレン似だと言う人は二度と現れない。私の人生の中で、あの二人はいったい何者だったんだろう。。。。。


ちなみに、母は乙羽信子そっくりだ。多くの人がそう言う。乙羽からローレンが生まれるのはやっぱありえない。