ベルサイユ製麺

つげ義春ワールド ゲンセンカン主人のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

4.1
93年制作、監督石井輝男。つげ義春原作。25年前です。同年劇場公開作には『シンドラーのリスト』『ソナチネ』、そしてなんと言っても『REX 恐竜物語』などが有ります!

初のDVD化という事で、準新作扱いでの鑑賞です!この手が有ったか!嬉しいなぁ。
石井輝男監督については、知ったかで言える程は観ていないのですが漠然と“エロス”“奇譚”“暴力”などのイメージを抱いてます。違ってたら申し訳。つげ義春先生に関しては代表的な作品は読んでいる筈ですが、なにぶん熱狂的な信者の多い作家様なので、“好きです”という程度に。(しかしつげ義春全作品を読むという事は可能なのでしょうか?)
タイトルは大括りに“ゲンセンカン主人”になっていますが、つげ先生の短編四作を繋ぎ合わせた構成になっています。
青林堂、ガロ編集部。編集者達がつげの話をしながらガロを捲る。“李さん一家”。編集部を訪れたつげを囲んでの議論は白熱する。芸術か?大衆性か?それで言えば例えばこの作品→“紅い花”。居心地が悪くなり退散するつげ。追いすがる若い情熱的な編集者に、つげが次回作の構想を語り出す。“ゲンセンカン主人”。創作に苦しむデラシネ的なつげの私生活“池袋百点会”。そして…。

素晴らしい出来栄えです。“動くつげ漫画”としては満点なのではないかしら?
つげマニアとして知られる佐野史郎さんが全編ガッチリ出ずっぱりなのですが、もう完全につげワールドの主人公にしか見えません。ゲンセンカン主人、天狗の面を付けてるのかと思いました!(それは付けてる)
その他のキャストも完全につげで、“紅い花”の童達なんて、よくこんな子が居たもんだなぁと感嘆してしまいます。李さんの奥さん、ゲンセンカンの女将、ランボウの福子さん。女性キャストがみんな絶妙にエロチック。石井輝男監督イヤラシイなぁ。
構成良し。各エピソード、印象的なシーンではまるで原作の構図をトレースしたかの様な正確さで、ファンには堪りません。幻想的なシーンもイメージ通り。テンポ感については人によって感じ方が異なると思いますが、個人的には問題は感じませんでした。もっと冗長でも良かったかな。画質が、たかだか25年前なのにもっとうんと古めかしく感じられますね。気分が盛り上がります。唯一ちょっと苦手なのは、エレキギターを多用した劇伴なのですが、…好みの問題かな?個人的にちょっと驚いたのは、“池袋百点会”のパートで、一瞬『LA LA LAND』を感じさせるシーンがあった事です。…さてはデイミアン・チャゼルの野郎…。
ラストに、予想外でちょっとムズムズしちゃうような展開有り!まあ、以降のつげ先生の波乱に富んだ人生を知ってしまっているだけに、無邪気に喜んでもいられない感はあるのですが。
つげファンの方は観ておいて損は無いと思います。少なくても完全否定って方は居ないんじゃないかな。原作愛に満ち溢れた、理想的な実写化だと思います。
つげ作品の実写化、今こそどんどんやってみて欲しいですね。“ヨシボーの犯罪”とか観たい!!
マニアの方にお得情報を一つ。25年前のきたろうさんと杉作J太郎先生の演技が見られますよ!J STORM!