カツマ

キャメラを止めるな!のカツマのレビュー・感想・評価

キャメラを止めるな!(2022年製作の映画)
3.8
大爆笑の火の粉がまさかのフランスに飛び火!ほぼほぼそのまんまのリメイクがここに爆誕!にも関わらず何かが違う?同じはずなのに何故?やはりオリジナルは素晴らしかった。だけれども、このリメイクもなかなか健闘。そこにあるのは絶対にカメラを止めない映画人たちによる魂の軌跡。製作者たちの悲喜交交を切り取った名品であることに変わりはなかった。

なんとあの『カメラを止めるな!』のフランス版リメイクが登場!監督には『アーティスト』でオスカーも獲得しているミシェル・アザナヴィシウス、主演にはロマン・デュリス、共演にベレニス・ベジョ、というやたらと豪華な布陣を揃え、インディペンデント臭溢れる元ネタを奇妙なほど丁寧に再構築した。微妙にピントを外している気もするけれど、初めての鑑賞ならばそれもあり?カメ止めと比べてしまうのも致し方なし。これはこれで、フランス映画なりの新解釈として楽しめる、かもしれない。

〜あらすじ〜

そこはゾンビ映画の製作の現場。主演の女優チナツは、ゾンビ役のケンに襲われる演技をするも、そのあまりの大根役者っぷりに監督のヒグラシが大激怒。ヒグラシの厳しい叱咤が飛び、涙ぐむチナツ。そこで一度撮影は休憩となった。チナツとケンは恋人同士で仲睦まじく、そこに加わったメイクのナツミと三人で監督の悪口を言いながらも団欒が始まった。その話の中でナツミはこの撮影現場が本当に呪われた場所であることを二人に話すと、そこに突然ゾンビが現れ、三人はわぁわぁと逃げ惑った。ようやく鬼気迫るシーンが撮れるようになったとヒグラシは歓喜するも、ゾンビから逃げる役者たちはそれどころじゃない。すったもんだしていると、今度はもう一体のゾンビが登場。それにしてはそのゾンビはどうにも様子がおかしく・・?

〜見どころと感想〜

内容はほぼ原作と一緒のリメイクだが、実際の原作をリメイクする、という舞台が映画に盛り込まれているのはリアルとフィクションの狭間を行くアイデアとして面白い。今作も低予算で作られているのも一緒。何とかして元ネタの安っぽさを再現しようと頑張っている努力を感じる。しかし、やはり惜しいのは元ネタよりもどうしても整ってしまうという点だろう。何しろロマン・デュリスは知名度があり過ぎて、どうしても素人っぽさが出にくいし、しゃはまはるみの雰囲気を出せる役者さんはなかなか見つからないだろうと思う。

ただ、さすがにロマン・デュリス、ベレニス・ベジョの二人の演技力は高くて、やや普段よりもオーバーに演技しよう、という努力は画面上にしっかりと刻まれている。嬉しいのはマダム・マツダ役として、原作にも出演している竹原芳子が登場しているという点だろう。まさかの海外進出を果たし、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いてしまった彼女のサクセスストーリーはまだまだこれから、かもしれない。
他にも監督の親族がキャストの中に混ざっており(娘と姪が出演している)、監督の妻のベレニスと合わせると監督の身内が三人も出演している、という超内輪映画というトリビアにも注目だ。

このリメイクが元ネタほどの爆笑を巻き起こせるか、というとそこまでではないかもしれない。が、元ネタにあった映画作りの裏側の苦労は色濃く刻まれており、発したいメッセージにブレがない点は非常に好印象だ。フランスらしいブラックジョークも散りばめられており、フランス映画としての質感を表面化した分、オリジナルの面白さと反発した向きもあったのかもしれない。それでもキャメラを最後まで止めなかったのはやはり偉い!こうなってくると色々な国のリメイクを是非とも見てみたいものですね。

〜あとがき〜

オリジナルと比べると落ちますが(オリジナルが個人的に好き過ぎるというのもあります)、それなりに健闘したリメイクだと思いますね。フランスでカメ止めを撮ったらこうなります、という日本とフランスの違いも感じられて面白かったです。

ただ、このリメイクを見ていたらオリジナルをまた見直したくなったかな。オリジナルの素晴らしさを再確認できた、という意味でも意義あるリメイクだったと思いますね。
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