けーすけ

こちらあみ子のけーすけのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.3
あみ子は小学生で活発な女の子。母親が、自宅で開く書道教室を邪魔したりしながらも明るく日々を過ごしていた。ところが、純粋で真っすぐなあみ子の言動に家族や学校の友達も振り回されはじめ・・・






今村夏子さんの小説を原作に映画化。原作未読。
エッセイぽい雰囲気のあるつくりで、あみ子と父親、身重の母親、兄といった家族や、学校の同級生との日々を描いていく内容。
ほっこりコメディっぽいものを想像していたら全然違った・・・


「あみ子はちょっと風変わりな女の子」って紹介されてますが、いわゆる発達障害を抱えた女の子なのだろうと思われます。
お母さんの顎にあるホクロに異常に気にしたり、テスト中に歌を歌ったりして追い出される。あみ子のそういった所がはっきりわかってくると、我々観ている側はあみ子が異質な存在として不気味に思えてきて「次、何をしでかすんだろう…」とハラハラさせられるという。

その得体のしれない不安感を抱えさせられつつ、次が気になってしまうという不思議な魅力のある映画でした。しかし途中からは、心をザラザラとしたもので擦られ続けているような感覚になった重さもありました。


先ほど、あみ子が異質な存在と書いたのですが、あみ子はひたすらに真っすぐで自分の思った事や考えをそのまんま外に出し続けているだけなんですよね。そこに悪意は持っていない。
それに対し周りの人たちが「普通」という枠から外れている存在に困ってしまうという。一応彼女に普通に接する存在はいましたが、もうちょっと助けになる人がいればよかったのにな、、、と思いました。


タイトルの「こちらあみ子」は、誕生日にもらったトランシーバーで「こちらあみ子!応答せよ!」と話しかけるシーンが幾度があり、そこからつけられていると思いますが、誰からも返答のないこのセリフにあみ子の孤独な叫びが詰まっていたようにも感じました。



あみ子を演じた大沢一菜はオーディションで決まったそうなのですが、ものすごいハマり役です。ほんとにお芝居?と思わされるくらいに凄かった。
お父さん・お母さんは井浦新と尾野真千子でしたが、こちらも良いキャスティングかと。お父さんの優しいながらも事なかれな感じが物語の切なさに拍車をかけてましたね。

あとは青葉市子さんが音楽を担当されておりED曲が沁みるものとなっておりました。


重くもありますが、観終わって色々と考えさせられる一作でした。


2022/6/17(金) オンライン試写会にて鑑賞。
[2022-013]
けーすけ

けーすけ