けーすけ

異動辞令は音楽隊!のけーすけのレビュー・感想・評価

異動辞令は音楽隊!(2022年製作の映画)
3.5
勤続30年のベテラン刑事・成瀬(阿部寛)は連続して起きている高齢者を狙ったアポ電強盗の事件を追っていた。ところが捜査令状も取らずに突撃したり、部下や周囲へのパワハラが告発され、成瀬は異動させられる事に。異動先はまさかの警察音楽隊だった・・・








『ミッドナイト・スワン』の内田英治監督作品。
30年間も刑事として犯罪捜査をして数々の事件を解決してきた男・成瀬が、いきなり音楽隊に放り込まれるという話。設定、タイトルからコメディ全開かと思いきや「もし自分がこういう状況に陥ったら?」と、意外と考えさせられる話でした。


冒頭もコメディ感からは離れたアポ電強盗を長回しのカットで不穏な空気。このアポ電強盗の連続事件が物語の要所で関わってきます。


単純に、いきなり音楽隊に放り込まれた元刑事が楽器演奏に目覚めて、というありきたりな展開ではなく、生きがいともしていた仕事を奪われ、絶望していた中からの再生の物語となっていたと思います。

音楽隊には自動車警ら隊や交通機動隊などと兼務し、プライベートの時間を割いてまで参加させられている者もおり、演奏レベルもモチベーションも全くない。
そういったやる気が無い人たちが成瀬と関わる事となりどうなっていくか、といったあたりは一部ベタな展開はありましたが、心温まる話もあり観ている側の感情が揺さぶられるかと思います。



不器用な男、成瀬を演じた阿部寛はさすがの貫禄。本作ではニューヨーク・アジアン映画祭で「スター・アジア賞」を日本人で初受賞。この勢いで世界のアベヒロシになるかな?笑

脇を固める清野菜名、磯村勇斗も安心感あっていいですね。磯村勇斗は阿部寛の部下役だったのですが、最後のほうにめちゃいいお芝居もってきてたので必見です。


演奏も出演者の大半が楽器未経験者だったそうで、阿部寛はドラムを数か月練習して挑んだそうで。叩いている姿はかっこよかった。清野菜名のトランペットもソロシーンがあったりで本当に練習しまくったんだろうな~と。
全員吹き替え無しの演奏シーンはカメラワークの良さもあいまってとてもかっこいいものとなっておりました。

笑えて泣けるエンタメ映画としておすすめです。



以上、つらつらと感想。で、観ている間は気にせず楽しんでたのですが、帰り道で色々考えてたら脳内ツッコミが炸裂してしまった。
以下核心ネタバレは無いですが、鑑賞時の感情に関わってくると思うので未見の方はご注意ください。





30年間犯罪捜査ひと筋、「足を使え」が口癖のゴリゴリ昭和気質の刑事、というのが主人公である成瀬への表現。
昭和気質って言うけど、30年前はもう平成やで。昭和生まれ&昭和の空気は残ってただろうけど、本当ににずっと同じスタイルを貫き通せたのはある意味凄い。何よりあの古臭いフレームの眼鏡を貫き通してるのはマジで凄い(因みに舞台は令和4年設定)。

コンプライアンスが叫ばれるご時世、いくらなんでも成瀬のやり方では10年くらい前の時点でもアウトになっている気もする。


アポ電強盗、3人組で連続して事件を起こしてくのですが、かなり人目につきやすいし、この犯行内容で長期間尻尾すらつかめてないって、警察無能すぎね?という思いが後からジワジワと。なんなら肝心なシーンで逃がしかけてるし…。

アポ電強盗のターゲットが高齢者。出てくる出演者にフラグがビンビン立ちまくるやん(想像した一番嫌な展開は外れた)。
っていうか、警察のみなさんアポ電強盗の情報収集とか啓蒙活動めっちゃしてたよね?それなのに、、、といったあとで冷静に考えるとおかしい部分も。

観ている間はさして気にならなかったので、映画の力で楽しかったんだと思います。笑



・阿部寛、主演作「異動辞令は音楽隊!」でドラム演奏に初挑戦 3カ月の猛特訓で「大変でした」(映画.com)
https://eiga.com/news/20220728/18/


2022/07/28(木) イイノホール 完成披露試写会にて鑑賞。F-3
[2022-016]
けーすけ

けーすけ