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スティルウォーターのzogliのレビュー・感想・評価

スティルウォーター(2021年製作の映画)
3.4
娘の無実を信じて奔走する父親が主人公のクライム系ヒューマンドラマ(なのかな)

予測不可能なのは結末でなくそこまでの過程

マットデイモンなんだけど今までのマットデイモンと全然違うので、ハリウッド映画のイメージを捨てて 是非食わず嫌いせず観てみて欲しい

わたしは「どうやら劇中でオリンピックマルセイユの試合が観られるらしい⚽️」って事以外の予備知識ゼロで突撃したので、有益な/社会的に立場が上の相手にはsirだのma’amだのつけて従順に返事するのに思い通りにならないと途端に口調を荒げたり、フットボールをサッカーと呼んだり(お前の国のフットボールは”アメリカン”フットボールだ馬鹿野郎)、他国の食いモンにもケチャップどばっとかけたりする主人公に腹がたちつつも見守ってるうちに、言葉も文化も違う異国でひとり佇む孤独感を味わったし二転三転四転する展開に思い切り翻弄された
けどそれが正しい楽しみ方だったのではないかと思っているし、全てを知った今 もう一度初めから観てみたい気すらしてる

最初から最後まで大小さまざまな嘘が散りばめられている本作
正義とは/悪とは、状況や環境 価値観によってこんなにうつろい変わる不安定で相対的なものなのか、事実と真実と虚実と嘘とは、真実が正義で虚実は悪なのか、真実が正義なのかあるいは真実とは限らずとも信じたものを貫く事が正義なのか、正義のための嘘 善意の嘘はどこまで許容されるのか 等々
ずっとずっと試されてる感じがしてた

大切なものを守るためにはその大切なものを手放さなければならず、大切だったはずのものが手元に残ったけどそれがもはや大切なのかもうよくわからない、みたいな穏やかなのにとんでもないあのラストに着地して皆何を思うのだろうか
わたしはとにかく落ち着かなかった

ビルとアリシア、ビルとマヤの、疑似を含む2つの父娘関係が盛り込まれてて2本分の父娘ドラマを堪能しつつ、サスペンス調のハラハラもありで内容も盛りだくさん
長尺だけど緊張感のあるシーンとほんわか父娘描写とではリズムが違うので、うまく緩急ついて観てて疲れ過ぎないし飽きない 絶妙な構成

異国の地でもがく主人公をみているうちにひとりで他国を旅した時の言葉と文化の壁に阻まれる孤立感と無力感とが思い出されて懐かしく苦く胸に響いたし(あの一族皆集まってテーブルを囲む食事会の疎外感まで思い出させてくれてありがとうよ……自分を跨いで異国の言葉で盛り上がる会話にはついていけないし、料理の食べ方が特殊だったりしてもなかなか会話に割り込んで訊ねたりも出来ないしな、パートナーだって家族と話したいだろうから常に自分の相手してくれるわけじゃないし、辛いよな…)、スタジアムのスタンドの熱気もものすごく恋しくなった

マヤは愛らしさだけでなくお芝居も素晴らしかった

前科者は選挙権がないらしいアメリカ、なるほどと思った
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