ワンシーンワンショットなのに全秒が絵画的で美しい構図を保っているという奇跡のような映画。ロイ・アンダーソンみたいなやりすぎ感もなく、ひたすら自然体なのに絵画芸術的な空間が完成されていて、その上で既視感の中にどこか懐かしさすら感じられるのが本作品の凄まじさを物語っている。夫婦が二人並んで風呂入ってるシーンとか、その次の食事のシーンとか額縁に入れて飾りたいくらい綺麗だった。クララ・リーデンシュタインの風貌が、どことなくフェルメール作「赤い帽子の女」に似ているのも、既視感の理由の一つなんだろう。物語は中世イタリアを舞台にしており、戦争大好き夫と結婚したポルトガルの娘が、夫にほっぽられて10年近く城で孤独に過ごす話である。二人の間には息子がいるはずだがいくら年月が経ってもほとんど登場せず、カットとカットの間にどれくらい時間が経ったかも分からず、絵画的な構図も相まって、時間が止まったかのような印象を受ける。と言いつつ、内容にはそこまで興味を持てず、美しすぎる構図の隅々にあるアイテムの配置なんかを見ていた。ただ、大傑作『The Sound of the Shaking Earth』には及ばず。