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パンケーキを毒見するの一のレビュー・感想・評価

パンケーキを毒見する(2021年製作の映画)
3.8
『i-新聞記者ドキュメント-』などを送り出したスターサンズの配給&映画プロデューサー河村光庸氏が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣の菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー

「記者クラブ制度」という、先進国としてあり得ないレベルのあまりにもジャーナリズムとかけ離れたシステムが未だにまかり通っており、国際NGOの国境なき記者団が毎年発表している「世界報道自由度ランキング」にて、2020年からさらに1つ順位を落とし、67位というG7の中でも圧倒的最下位という大変不名誉な結果になるほどジャーナリズムが瀕死状態であり、それに拍車をかけるかの如く今現在の腐敗しきってしまった日本政治に対して、ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で鋭く捉え、ストレートにメッセージが込められた中々強烈なドキュメンタリーでした

まず思ったのは意外にもフェアな映画だったということで、韓国の『共犯者たち』ほどの衝撃はないものの、かなり近しいテーマを扱っており、一部の恐ろしい界隈の人達には激怒されるであろう思想強めのパンチの効いた内容ですが、笑えるというよりは失笑せざるを得ないという感じ

「令和おじさん」という愛称で就任当初は親しまれていた現総理大臣である菅義偉、そして安倍晋三やそれらを取り巻く人々を徹底的に批判し揶揄するドキュメンタリー映画である為、未だに彼らの政治に期待している盲目的な“サポーター”様方は大変不快になるような作りとなっており、残念ながら彼らが本作を観たところで現実を受け入れられるわけもなく、「これは反政権側のプロパガンダ」「共産党(赤旗)や朝日新聞・毎日新聞などの反日勢力によるプロパガンダ」位にしか思うことはないのでしょう
(そもそも“サポーター”様方はこの映画を観ようとすら思わないでしょうけれど)

もちろん本作を観ただけで全てを鵜呑みにしたりわかった気になるのも良くないし、結局は自分の目でしっかりと見極め、判断する力も必要ですが…

肝心の映画としての部分に関してですが、風刺の効いたアニメーションや役者を使った演出、古舘寛治の心のこもったナレーションや、コントのような国会答弁のやりとりを全力で皮肉る姿勢など見応えはあったものの、それが逆にドキュメンタリー映画としてのノイズになってしまっている部分も正直なくはない
とはいえリアルタイムで進む今だからこそ深く考えさせられるし、観る価値は大いにあるドキュメンタリーだと思います

そして偶然とはいえまさかのこのタイミングで、安倍晋三の後援会が桜を見る会の前日に開いた夕食会の費用を政治資金収支報告書に記載していなかった事件で、当時安倍晋三を不起訴とした東京地検特捜部の処分の一部について、検察審査会が「不起訴不当」としたのが単なるポーズでないことを祈るばかり

少し話はそれますが比較的よく行く劇場での鑑賞だったのですが、まるでこの映画を象徴するかのように、ぱっと見九割五分以上と言っても差し支えないほど、あまりにも高齢者の方が多いという異様な客層には、映画人生で初めての経験だったのでかなり驚きはしましたが、それ自体がある意味映画とリンクしており、政治に無関心な若者達を体現しているようでなんだかゾッとしたりもしたし、だからこそ若い人達にも政治に関心を持ってもらうのが大切なのだなぁと…

兎にも角にもとりあえず言いたいのは、年齢に関係なく選挙権を持っている方は必ず選挙に行きましょうという事に限りますね

2021 劇場鑑賞 No.048
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