まちゃん

裁かるゝジャンヌのまちゃんのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.3
作品のモデルになった「オルレアンの乙女」ジャンヌ・ダルクの人生は非常に劇的だ。彼女の生涯を映画化する時に真っ先に思い付くのが派手な戦闘シーンを全面にアクションの連続で描く事だろう。しかし、カール・テオドア・ドライヤー監督の選択は違った。なんと実際の裁判記録に範を取った法廷劇を描いたのだ。サイレント映画と言えばチャップリンやキートンなど動きを主体にした作品のイメージが強い。静謐な人間ドラマを描く事は不可能だと思っていた。しかし、この作品を観てその意識を覆された。クローズ・アップを多用しジャンヌの感情を観客に伝える。動きの無い筈の裁判。だが巧みな編集技術は裁判の状況を映し出し、どのようなアクションよりもダイナミックに感じた。ジャンヌの純粋な信仰心の美しさ、異端審問の裁判官達から伝わる宗教の絶対性の恐ろしさ。複雑な人間の感情の可視化をここまで見事に描いた作品は他には無いのではないか。サイレント映画が唯のトーキー映画の前身ではなく一つの芸術様式として完成されていた事が良く分かった。ジャンヌ役のルネ・ファルコッティをはじめとした俳優達の演技のレベルの高さにも驚く。大傑作。
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