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裁かるゝジャンヌのKANAのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.0

ゴダールの『女と男のいる舗道』の好きなシーンの一つ、アンナ・カリーナが映画館でうるうるして涙をこぼす顔のクローズアップ。
この時彼女が観ていたのが、まさに本作。
ゴダールはこのデンマーク人の映画作家カール・テオドア・ドライヤーを敬愛してたというのもあり、とても観たかったサイレント傑作。

イギリスの侵略からフランスを救ったジャンヌ・ダルクが魔女として宗教裁判にかけられ、処刑される最後の一日のみを描く。

異端諮問官 vs ジャンヌの詰問と応答。
登場する人物はすべてノーメイク出演とのこと。
その顔たちをクローズアップの連続でじっとりと捉えていくスタイルがなるほどアバンギャルド!
劇中ほぼこのスタイルで通してる。
特にジャンヌを演じるルネ・ファルコネッティのこぼれそうな瞳の表情は、観ているこちらが消耗しそうなほど圧が半端ない!
キラキラした涙の雫も、原題にあるパッションを象徴してるようで映える。
サイレントだからだと思うけど、いい意味で芝居じみた演技。
だけど舞台作品と違うのは、繊細な表情の動きをどアップで抜けること。
そこの映画的芸術性を最大限に活かして本来のセリフ以上のものを感じ取らせ、のめり込ませる魔力。
舐め回すように映したおじさん達の年季の入った美しくない肌感、忌々しい目つき、禿げ具合w…それらすら。
クライマックスの絶望感はたまらなくシビアで、悲壮感あふれるBGMと共にもう、固唾を飲んで見入ってしまう。

冒頭に映像と説明があるように、本作はパリの下院図書館に保管されている『ジャンヌ・ダルクの裁判』という、その裁判の様子が正確に記された資料の内容を映像化したもので、純粋に教養としてもとても興味深かった。

拷問室のイカツい拷問器具たち恐ろしい…
火炙りの刑恐ろしい…
信心深い若い女性を抹殺する宗教界の理不尽さ…

そこには勇ましい女将ジャンヌではなく、死を前におののくありのままの人間としての彼女の姿があった。
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