グラビティボルト

聖地Xのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

聖地X(2021年製作の映画)
3.0
入江悠からジャック・ターナーへのラブレターと言うべきか。
ここまで理屈でドッペルゲンガー現象を解釈しようとされると逆にワクワクするし、劇中の三組の男女がそれなりの距離感にも関わらずあっさり合流する嘘っぽさは好み。
ただ、この題材なら長回しを1回は解禁すべきだったのでは?
ドッペルゲンガー登場シーンとか、場面のテンションが持続しないのが難。

美点も勿論ある。
ボンヤリしてると見逃してしまうような細部なんだけど、川口春奈と
薬丸翔の「別れ話」シークエンスは相当良かったと思う。
まず互いの体躯がすっきり見えるサイズのショットからバストアップ、
真正面からの顔のアップと編集してくんだけど、必ず彼女の台詞に合わせて切り替わっていく。

関係を終了させようという彼女の意志を最後まで尊重してるかのような編集。
ちゃんと脚本と映る役者と役柄を好きになれてないと出来ないことだと思う。
あと、「編集」は映画に対して舞台が獲得し辛い強みでもあるから、差別化するという意味でも正しい判断だなと感じた。

入江悠、ちゃんと映画好きだなと。
この作家の映画、健闘ぶりがわかるだけで大体嬉しくなってしまう。
「変な映画をモノにしてやろう!」という野心も感じる。