「見ろ! 男が虫ケラのようだ!」
全編に渡ってこんな感想しか出てこない、女殺し屋大活躍映画。
出てくる連中、全員悪人。おそらくロケ地はゴッサムシティ。
過去の映画で例えるなら
「キル・ビル」+「レオン」+「フレンチ・ディスパッチ」+「女殺し屋 vs 汁男優100人」
みたいな内容。
ジャージ姿でスタイリッシュなアクションを披露するのは「キル・ビル」だし、子供を守るために戦う設定は「レオン」、ネオンカラーを多用した絵画のような画作りは、最近の作品だと「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」や「フレンチ・ディスパッチ」を彷彿とさせる。
女殺し屋として育てられた主人公が、助けた子供と一緒に、暗殺組織から追われる。主人公が頼ったのは、世を忍ぶ仮の姿として図書館司書を営む、凄腕で妙齢の女殺し屋たち。
「本を借りたいの」
主人公が旧知の司書たちに声をかけると、何冊もの分厚い本を出してくる司書たち。
本をパカッと開くと、中身はくり抜かれており、収まっているのは様々な銃・銃・銃……。
このシーン、俺の中2病センサーが振り切れるんじゃないか、ってほど最高!
「本借りたら、中に銃が入ってる図書館、ありえなくね!?」
「そもそもこの図書館、利用客一人もいないやん」
みたいな冷静な指摘をする男がいたら、そんな奴は、ミシェル・ヨーの三味線屋の勇次ばりの首吊りテクでゴミのように吊るしてほしい、と強く願う。
・リアリティなんてどーでもいい!
・「ボクの考えた最高のアクション」
・熟女のメイドコスが観たい!
という監督の魂の叫びが痛いほど聴こえてきた。わかる、わかるよ……。
出てくるロケーションが、図書館、ダイナー、ボーリング場、病院、そしてレンタルビデオ屋……って、中2病以外の何者でもない。しかも、懇切丁寧に全ロケーションでアクションシーンを入れてるのも、親切すぎて、監督のサービス精神が伝わってくる。
細かいけど、レンタルビデオ屋が「閉店セールの真っ最中」(店内に貼ってあった)って設定なのも良い。「Netflix killed the video star」な現代に対するちょっとした皮肉だよね。
俺的には、「なんとかして観たことのない新しいアクション」を作りたい、という志が感じられたのも好印象。ちょっとネタバレだけど、両手が使えない状態での車椅子バトル。子供に運転させる駐車場でのカーチェイス。などなど、少なくとも俺はこれまで観たことない、ツイストの効いた設定が多くて眼福だった。戦闘シーンのジャニス・ジョプリンの使い方もカッコいい。
殺されるためだけにワラワラと出てくる虫ケラみたいな男連中。弱すぎて俺ですらワンパンで倒せそうな連中ばっかりで、「ホントにワルなの?」と疑いたくなる。ついでに言うと、「生け捕りにしろ」とか「子供は無傷で返せ」といった命令を律儀に守っていて、いい人感ハンパない。それなのに容赦なくブチ殺されていて、正直、男なら何でもやっていい、って思ってんじゃないか?って気にもなってきた。
まぁ、話は荒唐無稽だけど、2時間楽しむことが出来ました。
色々あっても、二刀流のビルドでザコ敵を無双する女性たちの姿には、レベル80にまで上げても狭間の地でボコられてしまう俺としては、尊敬の念を禁じ得ない。
ところで、一つだけ残念だったのは、この図書館には俺が毎日手入れを欠かさない俺のジャベリン砲を収納するだけの分厚い本が所蔵されていないように感じられたところだ。
続編があるなら、ぜひ、俺のジャベリン砲を収納する特大の本を用意して、俺のジャベリン砲を活用していただきたい。
ギャラは自家製ミルクシェイクで良いので、ひとつ、よろしくお願いします。
(おしまい)