つかれぐま

わたしは最悪。のつかれぐまのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.0
22/7/14 @ル・シネマ #2

【ノルウェイの森🌳に隠せ】

「わたしは最悪」と自戒しつつも、自分探しが止められないユリヤが主人公だが、どうにも彼女に面白みというか奥行が感じられない。では本作が駄作かというと、ちゃんと「地に足の着いた」男性を引き立たせる見事なユリヤの「脇役」ぶり。この皮肉が本作を面白くしている。

監督は男性だ。
ユリヤの元彼・アクセルのコミック作家という設定は自己投影先だろう。劇中のアクセルの願い「クリエイターには表現の自由がある(多少性差別的でも)」と「女性には子供を産んで欲しい」は、おそらく監督自身の本音。だが、こんなテーマを誰の眼にも分かるように掲げたら(劇中のコミック同様に)炎上するのは明らかだ。

★★以下ネタバレ★★

そこでこのテーマを「森に隠した」んじゃないか?とふと思った。ここでいう「森」はオスロの綺麗な街並みであり、ユリヤの奔放な美しさ(自分の性的魅力に自覚的な所も)。ちょうどハーフタイム辺りの「時空が止まるシーン」が正に観客に魔法をかけた瞬間で、あのシーンを境にユリヤが2人の男性に置き去りにされていくのだが、それを上手くカモフラージュするのに効果的だった。さらにはその仕上げにアクセルを死なせることで、前述した彼の主張への反論も巧妙に忘れさせる。本作が男性からも女性からも概ね好評なのは、おそらくこうした仕掛けが功を奏したからだろう。

アクセルの「子供が欲しい」願いは、ラストでアイヴァンが代わりに。もうひとつの願い「クリエイターの表現の自由」は、いわばこの作品そのものが叶えている。監督の「完全犯罪」成立だ。

女性のフォロワーさん減りそう・・。