Aoi

わたしは最悪。のAoiのネタバレレビュー・内容・結末

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

予告を見てから待ち望んでいた
『わたしは最悪。』
地方でもようやく公開が始まり、やっと見れた。
最高だった。



夕暮れのオスロの湾を背景に黒のイブニングドレス姿で佇む女性。その横顔は退屈とも浮かないとも言える表情を浮かべているーー

最初のカットでつかまれた。この時点から1秒たりともスクリーンから目を離したくないと思った。


12章に章立てた小説のような物語構成。
自虐的な目線の語り口、エッジが効いた会話、言葉選びのセンスが刺さりまくった。
“ウーマンスプレイニング”の切り返しとか特に痛快。字幕でも面白さは十分伝わったけど、汲みきれていないノルウェー語のニュアンスがあるんだろうなとも感じる。
ユーモアだけでなく「愛してるけど愛してもいない」のような、ユリヤの繊細な感情を端的に言い表しているセリフも多かった。


ストーリーだけでなくビジュアルも最高。ベタだけどオスロの美しい街並みやシンプル&ナチュラルな北欧インテリアの雰囲気、カラフルな色使いが素敵だった。ユリヤを演じたレナーテ・レインスヴェも魅力的な俳優で、ラフだけどセクシーなスタイルも好き。

そしてやっぱり今まで見た事のないような映像の仕掛けに驚いた。
現恋人のアクセルから新たな恋人アイヴィンのもとへ迎う時、自分たち以外の全ての時間が止まるシーン。「恋は周りを見えなくする」のファンタジックな映像表現だった。歌も踊りもしてないけどミュージカルのような演出だと思った。(小高い丘のベンチでの一夜は『ララランド』みたい)
度肝を抜かれたのは薬物の幻覚シーン。ユリヤの潜在意識にある恐怖が全てひっくるめて具現化し、彼女の体にまとわりつくトラウマ映像だった。


感覚的に人生の選択をし、一時的に得られる圧倒的な全能感。でも結局は行き詰まり、理想と現実のギャップで自己嫌悪に陥る。時には大きな過ちもする。
未来は分からないし不安だけど、若い“今のうち”を最大限に楽しみたい。
恋人との関係は満たされてるけど満たされない。新しいものに目移りするし、やっぱり自分が主役になりたい。


たとえ人生で同じ経験をしていなくても、年齢/性別が違くとも、多かれ少なかれ共感できる部分がある。そういう魅力がユリヤ自身、そしてこの作品全体に詰まっていた。


最近公開されたポール・トーマス・アンダーソン監督の『リコリス・ピザ』のアラナも、大胆で楽天的、モラトリアムを手放せず、どこか居場所を見つけられていない等身大の女性という点で似ていた。
本作のユリヤは現代に生きる女性像をより繊細に描き、恋愛だけでなく人生というテーマに踏み込んでいた。同世代の女性としてこの作品を公開時に見れて本当に良かったと思う。

全然感想がまとまらないけど、今年1番
心をわしづかみにされ、かき乱された作品。
Aoi

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