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かもめ食堂の海のレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
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小さい頃、風邪をひくとすぐご飯が食べられなくなって、近所の医院に点滴のため通っていた記憶がある。いま猫がご飯を食べるすがたを見ながら、大事におもっているいきものがちゃんとご飯を食べているその光景はなんて幸福にみちたものなんだろうと泣きそうになり、生きていることのすばらしさを知る。ご飯を食べることにずっと執着がなく、活動するために必要最低限で食べるという感覚でいたけど、ようやく最近、食べることを少し好きになった。毎日、朝と昼と夜、ご飯を食べ、着替えをして、仕事に行き、仕事の愚痴やスーパーの安売りやラジオで流れているあれこれについて話したり笑ったりをし、帰ったらお風呂に入り、絵を描いたり、金曜の夜は買い物へ行き、日曜の夜はマニキュアを塗りなおして、ねむりにつく。おなじだったはずの日々は、すこしずつおなじじゃなくなっていく。部屋の照明を変えたり、猫はすこしふとっていて、解決した悩みもおわらない孤独もある。きのうのわたしは、ずっとどこにでもいて、もうどこにもいない。だから誰かといたくて、わたしを知るあなたが、いなくなっちゃうことはさみしい。世界で一番美味しい食べ物は、ほんと、たぶん、おむすびだ。おかかも梅干しもいいけれど、広島菜としらす、さくらえび(おきあみでも可)と茶葉、つわぶき、めんつゆ焼きおむすびも美味しいよ。無限にあるよ美味しいおむすび。生活と料理とそれから大事そうに抱かれているかわいい猫の映画だった。
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