リミナ

アリスとテレスのまぼろし工場のリミナのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

閉塞し停滞した世界で変わる子供と大人。

岡田麿里氏にとって監督第2作目となる劇場アニメ。本作は原作・脚本から手掛けたオリジナル作品であり、氏の作家性が色濃く出ている。扱っている内容からしても挑戦的とも捉えられる。制作会社はMAPPAでオリジナル作品は初。

氏の作家性として、家族関係や恋愛感情、性に対しての生々しさがある。本作では閉塞的な世界の中、中学生同士の恋愛の間に実の娘を絡ませ、子供ながら親の側面も与える。子供が同じ子供時代の親に会うのは他作品でも珍しくないシチュエーションだが、娘から父へ明確な好意を向けさせるのがモラル的にも中々挑戦的(当時は自分の父親と知らないとはいえ)。
登場人物も冒頭から自分の下着を見せつけるような描写で、次に何をしでかすか分からない危うさがあり、つい目が離せない。

映像的にはやや古びた工場や街並みの錆びた質感が伝わる背景美術や感情が伝わるキャラ作画が良かった。クレジットには吉成曜氏や井上俊之氏、伊藤秀次氏らの名前もあり劇場作品らしさがある(ただ、担当カットは多くない)。キャラ作画は深夜アニメでもあまり観れないような艶を出していたのが印象に残る。

物語的には世界の異変は主人公らだけが自覚してる訳ではなく、街の住民全体が対象になっていたのが良かった。大人にも大人の物語があり、それがときに子供との対立を生む。
少し気になってしまったのは、停滞した世界の中でどのくらい時間が経ったのかが登場人物の姿が変わらないため、分かりにくい。また、同じ時間を過ごすことも絶望感にはあまり焦点が当たらず、割と現実を受け入れてしまっている住民たち。

ファンタジーではあるが、自然災害やウイルスによって制限された現実世界とも通じるような感覚がある作品。
一部描写の過激さが先行して拒絶してしまうにはもったいなく思う。
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