うっちー

モガディシュ 脱出までの14日間のうっちーのレビュー・感想・評価

4.2
『ベテラン』などのリュ・スンワン監督の『モガディシュ 脱出までの14日間』を公開初日に鑑賞。こういう韓国映画、久々かも。とにかくすごいスピード感とスリル。

 80年代後半のアフリカはソマリアに駐在した韓国、そして北朝鮮の大使とその家族が同国の凄まじい内戦に巻き込まれ、生き残り、脱出するまでの日々を描いたもの。外国人とはいえ、政府を支援したかどで反乱軍に銃口を突きつけられる恐怖、動いたもの、目についたものから片っ端に撃たれそうになる大混乱の地獄。その暴力的な反乱軍には年端もいかない少年などの子どもたちが混じる悲劇。
 反目しあっている南北の大使たちの緊張感あふれるやりとりや駆け引きが、やがて切迫した段階で協力し合うことになる皮肉な展開はドラマチックだけれど、ある部分は実話だということで、双方ともにさぞ複雑な心境だったろうと思う。

 この人がいたら間違いないというキム・ユンスクの熱い安定感はもちろん、北の大使に扮するホ・ジュノの品格ある冷静さ、あの大注目のク・ギョファンの癖の強い役回りも秀逸で最後まで一気に観させる。しかし終盤のカーチェイスの激しさたるや、ここまでのものはあまり観たことがなく、本当にドギマギした💦 ラストは分断国家の悲哀を冷徹に痛感させられる。

 これをエンタメと言ってよいかわからないけれど、めちゃくちゃ面白い。それでいて、国とは、争いとは、協調や連帯とは、などさまざまなことを考えさせられる。とにかく凄かった。

※ハン大使の役、ファン・ジョンミンだったらどうだったかなと夢想。どちらにしろ様になっただろうな、とか。でも、ふてぶてしさと懐の深さを体現するユンスクシはまさに適役だと思う。
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