まちゃん

最後の決闘裁判のまちゃんのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
14世紀のフランス、騎士ジャン・ド・カルージュとその友人、従騎士ル・グリは国王シャルル6世の立ち合いの下で決闘に臨もうとしていた。二人の決闘を見守るカルージュの妻、マルグリット。友人だったカルージュとル・グリは何故決闘する事になったのか。マルグリットと2人の間に何があったのだろうか…。実際に起きた決闘裁判を元にリドリー・スコットが映画化した歴史劇。決闘裁判とは両者の言い分が食い違う場合に決闘をさせて勝った方の言い分が真実だという裁判形式。真実を言うものには神の御加護がついているから勝利出来るという考えらしいが極めて理不尽でこれが最後になったのも頷ける。この作品では黒澤明「羅生門」の手法を使い、多角的な視点で真実を浮かび上がらせる。個人の主観での真実が他者の客観によって覆る様は極めてスリリングであり引き込まれた。特にカルージュとル・グリの身勝手さは際立っていて騎士、決闘、勇気、名誉といった美名に隠された中世の残酷さがよく表現されていた。決闘シーンは血塗れで泥臭く痛みを感じさせるリアルさだった。本物の殺し合いのおぞましさを感じた。83歳を迎えた巨匠の新たな代表作だ。
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