KANA

都会のアリス 2K レストア版のKANAのレビュー・感想・評価

3.9

ヴェンダースによる「ロードムービー3部作」の第1作であり、『パリ、テキサス』の原石ともいえる作品。

NYにてひょんなことで知り合ったドイツ人作家フィリップと同じくドイツ人の9歳の少女アリスが2人である目的地を目指すことに。
アメリカンドリームを掴めず、虚なフィリップ。
アリスに振り回されながらも見放すわけにもいかず、相手をしてるうちにいつしか彼女を通して自分自身を見つめるようになる。

正直退屈覚悟で臨んだのだけど、杞憂だった。
別に展開的にどうとわけではなく、移動し続ける空間で絶えず変化する2人の機微・空気感にぐいぐい引き込まれる。
気の利いた台詞を言うわけでもないのに、不器用な行間がものすごくいい。

アリスを演じたイェラ・ロットレンダーが魅力的なロリータだった。
大人びてて小生意気。
とはいえまだ9歳。あどけなさもないまぜのアンビバレンスがいい。
スカジャンにジーンズもすごくよく似合ってて。
フィリップに対する隠しきれてない恋心も愛おしい。

証明写真機?で一緒に連写するシーンと、おどけながらエクササイズするシーンが好き。ほっこりする。
あと、次に向かうべき街の名前をフィリップが列挙してアリスが「違う、違う、違う・・」って公共トイレでドア越しに即答していくシーンがシュールで笑えた。
ビター一色でなく、こういったハズシのカットを加えるバランス感覚が素晴らしい。

全編敢えてザラついたモノクロで、特にドイツのヴッパタールなんかすごくノスタルジーに浸れるし、さらに即興選出でドキュメンタリーっぽい。
ラストショットは行く末のわからない孤独な2人を上から見守っているような優しさを感じてほの明るい余韻が残る。
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