よしまる

アステロイド・シティのよしまるのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.4
 もうすでにウェスアンダーソンを愛でるには作法が必要という域に入ってきてしまった。

名だたる俳優がこぞって出演したがり、常連に加えて今回もトム・ハンクスやマーゴット・ロビー、スティーブ・カレル、マット・ディロンといった超大物が大喜びで初出演を果たしている。しかも、あれ、今回何作目だっけ?と思わせるほどに自然に溶け込んで。

作法、という意味では、常連組は今回はどんな役どころで出るのかも楽しみだ。
例えばウィレム・デフォーとエイドリアン・ブロディが同じ画面に収まるだけで可笑しくて仕方がない。しかも白黒w
監督、最高です❣️

シュワルツマン演じるカメラマンは奥さんを亡くし失意を持ってアステロイドシティを訪れる。ハリウッド女優のスカヨハは彼氏か旦那か忘れたけど揉めたかDVだかでこれまた終始アンニュイな表情で佇む。

なんとなく惹かれ合うふたり、それだけで1本のドラマを作ればいいものをそんな一筋縄では済まさないのがウェス流。

科学賞の表彰を受ける5人の子供たち、その親、そこへこともあろうかジェフゴールドブラムの高身長イケメン宇宙人w
のどかな地方都市の人間模様を感情の起伏を極限まで削ぎ落としてシュールに描く、なんてぶっちゃけ退屈以外の何物でもない。

で、そういう舞台設定を演劇集団が作り上げドラマ化して、テレビで放映している、という映画。わかりにくいわ!笑

昨年末「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」のリニューアル版を観にいったのだけれど、まあ若い子の多いことw
今でいう「映え」る景色はそりゃかわいいかわいいの大騒ぎになっても何ら不思議ではない。
本作もパステル基調のカラースキム、砂漠の中にこしらえたハリボテセットの愛くるしさ、何よりアンダーソン映画を観に行くというオシャ感の圧が凄い。映画マニアの密かな愉しみだったはずのアンダーソン作品がいったいいつの間にそんなことに。

ちょっと書いててまとまりがなくなってきたのでまとめるよ。

ウェス・アンダーソンというちょっとマイナーなオシャレ映画を観ておく→OK。
色彩やジオラマ感を映像で楽しむ→OK。
大スターの競演、嬉々として演じる役者たちの表情を楽しむ→OK。
分かりにくい元ネタ探し、画面の隅で繰り広げられる細かな演出に酔う→ウーン。
極上にポップな設定の中に忍び寄る不穏な空気感を味わう→ウーン。
親子愛や恋人や友情、意外にシンプルな人間関係の温かみに和む→OK。
1950年代、映画からテレビへと移行する宇宙時代の到来に振り回される人々の時代感を懐かしむ→ウーン。

とまあ書き出すとほんとにたくさんの魅力を備えた、見た目の軽さの中に驚くほどの厚みと質量を持った映画であることは間違いないのだけれど、上記のうちOKが多い人ほど楽しめるし、ウーンだらけでダメな人は怒ってもいい作りになっている。言わばすこぶるバランスが悪い。

要は撮ってるほう、演じてるほうは楽しいだろうけど、観客置いてけぼりもたいがいにせーよ、そんな映画だった。

てわけでウェス・アンダーソン大好きなボクであっても、よしまる2023年洋画ランキング第20位でお届けしました。