カルダモン

アステロイド・シティのカルダモンのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.6
ソ連とアメリカが競い合って宇宙開発を推し進めていた時代がウェス・アンダーソンの箱庭的風景で描かれる。一見温かな色調の中に忍び寄るダークな気配。アメリカ軍は隕石の落ちた荒野の町アステロイド・シティに天才科学児童を集めて化学コンテストを開いている。そんな町にやってきた父子家庭の家族。荒野の向こうでは原爆実験。明るいビジュアルに反して時代背景は不穏。
ややこしいのは、この物語がテレビ放送用に撮影されている『アステロイド・シティ』という演劇だということ。序盤になんとなく説明はあったような気がするのだけど、まったく頭に入っていない。例によってビジュアルに気を取られているせいで字幕を追えていないウェス現象。

カラフルな色彩や美術セットは仮面のように、映画の素顔はほとんど見えない。登場人物の表情は徹底してポーカーフェイスを貫き、感情を読み取らせてはくれない。起こっていることが劇のシナリオによるものなのか、あるいはオフ時間でのことなのか、同じ表情の彼らから読み取ることができなくてモヤモヤ。レンタル期間中に2回観たけど理解及ばず、解説を読んでもピンと来なかった。たぶんW.アンダーソンは理解されるように作っていないんだろう。そう簡単にわかられてたまるかというヒネクレ精神の表れなのかもしれない。それでも、家族あるいは不特定多数の集合体、集団の寂しさなどは滲み出ていたし、子供らが宇宙の勉強そっちのけで昨日見た宇宙人に夢中なのが可愛かった。