ツクヨミ

ベルリン・天使の詩 4K レストア版のツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

モノクロとカラーが共存する詩的すぎるベルリン。
ベルリンに腰を下ろし人々の内なる声に耳を傾けてきた天使ダミエルは、ある日サーカスの美女マリオンに恋をする…
ヴィム・ヴェンダース監督作品。特集"ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ"にて鑑賞、1987年カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した本作はファンタジックで詩的な作品だった。
まず設定として今作の主人公は天使であるのが、ヴェンダース作品としては異色だ。これまでリアルなロードムービーをずっと撮ってきた監督で主人公が天使というファンタジー路線になるのが面白い。そして前作"パリ、テキサス"よりも更にロードムービー感が薄くなり、街を放浪しさすらうテイストが"さすらい"的な雰囲気を作り上げている。
また今作は"まわり道"で脚本を担当したペーター・ハントケが脚本を務めており、前半は特に天使が聞く人々の心の声がなんとも詩的だ。この詩的さは"まわり道"より度がすぎると言うべきか、いろんな人々の声が多量に重なった時は頭が割れそうなくらいクレイジーな音響効果を作り上げている。この情報量多めのテイストは少々苦手な感じもして前半は特にノれなかった印象。
しかし後半は主人公ダミエルのストーリーが如実に進み出し、映像編集的にも面白い絵面が見て取れた。前提として今作はモノクロ作品であり、前半はカラーが稀に挿入されていた。そこから後半そのカラーの仕組みがモノクロは天使目線.カラーは人間目線であると分かってからは、天使と人間の変わるがわるの映像がなかなか良く、人間になったダミエルと残った天使の対比的クロスカッティングが良い味を出している。そして時折現れる絵画的映像美は流石の一言、"パリ、テキサス"ではロードムービー的美しいショットが何度かあったが今作は静止画美ショットがなかなか多かった印象だ。
後半の展開や編集や静止画的映像美は良かったが、詩的すぎる音響がかなりノイズになってしまった印象を受けた。世界観や雰囲気はカルト的人気がありそうだとも感じたが、あまり好きではないヴェンダース監督作かもしれない。
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